屋根修理の失敗談をご紹介します!〈鉄骨造(S造)・鉄筋コンクリート(RC造)編〉

屋根修理の失敗鉄骨造・鉄骨コンクリート

このページでは、お客様が当サイト、屋根修理の匠にお問い合わせ頂く前に、実際にあった屋根修理のトラブル事例について紹介します。

またこのページは主に鉄骨造(S造)・鉄骨コンクリート造(RC造)の建物について解説しています。(木造編はこちら

今後の屋根修理業者選定の参考にしてください。

屋根修理の失敗談① 屋上防水工事をしたら屋上がプール状態に

陸屋根の防水改修工事を実施したにも関わらず、その後の大雨で雨漏りが発生してしまった事例です。屋根に雨水が溜まってしまい満水状態になり、塔屋出入口の扉付近から雨水が室内側に流れ込んだことが原因です。過去にそのような雨漏りは一度もなかったのに、防水改修工事後に初めて発生した現象です。何故そのようなことが起きてしまったのでしょうか?

屋上の排水ドレン(排水口)は、陸屋根の面積から排水量を計算して、口径や数量が設計されています。しかし、目皿(ストレーナー)の目詰まりや、配管自体の閉塞などにより、設計段階において想定した排水量が下回ってしまうことも少なくありません。加えて、昨今の局所的大雨(ゲリラ豪雨など)や集中豪雨により想定雨量を超えることで、排水量が不足する可能性もあります。新築時の想定雨量を大きく超える大量の降雨は深刻な雨漏りの事故に繋がります。

陸屋根の防水改修工事は10年~15年程度のサイクルで実施されることが一般的です。防水改修工事の際には排水ドレンに「改修用ドレン」を設置する工法が主流となっています。改修用ドレンとは、既存の排水ドレンの内側に取り付けるもので、仮に旧防水層に何らかの不具合があったとしても、新規防水層と改修用ドレンを一体化させることで雨漏りを防ぐ仕組みになっています。旧防水層に残ってしまった水分の排出を妨げることもありません。防水の仕様や雨漏りの有無を問わず、防水改修工事においては必須と言っても過言ではありません。

防水改修工事に必須の改修用ドレンですが、注意すべき点もあります。既存の排水口の内側に取り付けるため、排水部分の口径がサイズダウンすることになるのです。例えば、既存の口径が100Φの場合は90Φ程度に、既存の口径が75Φの場合は60Φ程度に、と小さくなってしまいます。もし元々の排水ドレンにおいて排出量に余裕がない場合、改修用ドレンを取り付けることで排出量に不足が生じ、満水による雨漏りなどの危険性が高まります。配管の閉塞を自ら造ってしまうようなものです。目皿(ストレーナー)の目詰まりの危険性も慢性的に存在しているため、既存の状態よりも防水改修工事後の方が満水事故の可能性が高まるという残念な結果にもなりかねません。

改修用ドレン(ウレタン防水用鉛ドレン) 改修用ドレン設置状態

屋根の面積に対してギリギリの排出能力しかもたない排水ドレンに、改修用ドレンを取り付けることは雨漏りなどのリスクを高める可能性があるのです。しかも、ストレーナーにより雨水の流れは多少悪くなります。もし元々の排水ドレンの数自体が少なかったら危険性はさらに高まります。

冒頭で紹介した雨漏り事故は、まさにそのような条件が重なって発生したのです。雨漏りを予防する目的で実施した防水改修工事が原因で、満水による雨漏り事故が発生してしまったのです。室内に流れ込んだ雨水によって家財などに大きな損害を与えることになってしまいました。

この雨漏り事故にはいくつかのポイントがあります。

ポイント① 元々排水ドレンが1か所しかなかった。

排水ドレンが1箇所、つまり排水経路が一つしかないため、唯一の排水経路である排水ドレンに何らかの支障が生じた場合、豪雨時に排水量が追い付かず屋根がプール状になりやすい状態だったと言えます。にもかかわらず、防水改修工事の際に改修用ドレンを設置したことで、排水機能(排水量)の低下を招いてしまい、今まで以上に満水状態に陥りやすくなってしまったのです。

ポイント② 出入口の段差(立ち上がり)が小さく、元々陸屋根の貯水能力(許水許容量)が少なかった。

塔屋出入口の段差(立ち上がり)が低く、元々陸屋根に雨水が溜まった場合の貯水許容量が少ない状態でした。つまり排水不良による満水状態が雨漏りに繋がりやすい建物だと言えます。昨今はバリアフリーを考慮した設計が多くなり、バルコニーや屋上への出入り口などの立ち上がりが低い建物が増えています。バリアフリーの思想も大切ですが、雨漏りのリスクが低い設計も大切です。バルコニーや屋上への出入り口などの開口部の立ち上がりの段差は、万が一のことを考えると高い方が安全だと言えます。

対処方法① 排水口のまめな点検と掃除

木の葉や土砂などが排水ドレンの廻りに堆積して、排水機能の障害にならないように、こまめな点検と掃除が大切です。今回の雨漏りは、もし排水ドレンの掃除が行き届いていれば防げた可能性が高いと考えられます。

排水ドレンまわりの土砂堆積

対処方法② 排水経路を増やす

唯一の排水経路である排水ドレンが目詰まりなどで機能しなくなった場合を想定し「オーバーフロー管」を新設することが有効です。雨水が室内側に侵入しないようにすることが目的なので、出入口扉の下枠よりも低い位置に設置する必要があります。

オーバーフロー管の設置状況

解決策:防水工事の際は雨水排出量を計算する。

屋根修理の失敗談② 屋上防水工事をしたら、あちこちで膨れが発生した

鉄骨造(S造)のメンテナンスといえば、防水、シーリング、外壁塗装の三つが中心となります。極端に言えば、この三つがしっかり機能していれば建物最大のりすくである雨漏りを防ぐことができるのです。細かくは貫通部や取り合い、外壁の割れなど、他にも雨漏りの原因となる要素はありますが、それらも全てシーリングと塗装、防水でしっかりと保護していれば雨漏りは防げるのです。

鉄骨造(S造)は木造住宅と違い、基本的に外壁の内側に二次防水がありませんので、いわゆる一次防水となる表面で止水するしかありません。したがって、防水、シーリング、外壁塗装が非常に重要であり、この三つのメンテナンスこそ建物を守ることに繋がるのです。

そんな重要なメンテナンスの一つ、屋上防水改修工事における失敗事例をご紹介します。

鉄骨造(S造)3階建て、築年数25年、改修工事履歴としては築15年時に一回という物件です。縁あってオーナー様をご紹介頂き、二回目の改修工事は弊社にて施工させて頂くことになりました。屋上へアクセスする方法がなく、事前に屋上の様子を見ることができませんでした。お客様によると前回の改修工事の際には屋上防水工事も施工したとのことですが、現在の状態を確認することができなければ工事の提案はできません。苦肉の策として、改修工事に着工して足場を架けてから屋上の状態を確認することになりました。

足場架設後に屋上の状態を確認すると、次の写真のように既存のウレタン防水層に多数の浮きや膨れが発生していました。また脱気筒も設置されておらず、伸縮目地(成形目地)も撤去していないままウレタン防水が施工されていました。

ウレタン防水の膨れ

膨れて浮いているウレタン塗膜の一部を剥がしたところ、「押さえコンクリート」が確認できました。押さえコンクリートが施工されているということは、その下に防水層があるということです。押さえコンクリートは、その下にある防水層を保護するためのものだからです。押さえコンクリートには「伸縮目地」あるいは「亀裂誘発目地」という、建物の動きでコンクリートに亀裂が発生しないよう予め意図的に作った目地があります。既存の防水層と押さえコンクリートとの間には雨水が滞留しており、押さえコンクリートそのものも水分を含有しています。

このように多量の水分を含んだコンクリートの上にウレタン塗膜防水を施工すれば、ウレタン塗膜の蓋で水分を閉じ込めることになってしまいます。ウレタン塗膜で蓋をされた屋上が、太陽光に照らされて熱を浴びるとコンクリートの温度が上昇します。温度が上昇すると滞留水やコンクリートに含まれる水分は水蒸気となって膨張します。防水改修工事をする前であれば、湿気や水蒸気はコンクリート表面から放出していたはずです。しかし、蓋をされてしまったため逃げ場がなくなり、蓋であるウレタン塗膜を突き上げ(押し上げ)てしまうのです。これがウレタン塗膜防水の膨れのメカニズムです。膨れは、最終的にはウレタン塗膜を破断させ、防水層としての役目を果たさなくなってしまいます。

このトラブルを防ぐためには防水改修工事の工法(仕様)の選択が需要になります。今回の事例では、ウレタン塗膜防水の「密着工法」で施工されていました。これは施工面である押さえコンクリートの表面に、直接ウレタン塗膜防水を密着させる工法です。この密着工法では下から突き上げてくる水蒸気を逃がすことができません。密着工法の中には、伸縮目地に脱気筒(水蒸気を逃がす筒状の部材)を取り付ける「目地脱気」という工法もありますが、全ての水蒸気を排出することができず、ウレタン塗膜の膨れを抑制できません。

今回の物件のように比較的広い面積の陸屋根の場合には、密着工法ではなく「通気緩衝工法」という工法(仕様)を採用するのが一般的です。通気緩衝工法では、押さえコンクリートの表面に通気緩衝シートを張って通気層を設けます。この通気緩衝シートがコンクリートからの水蒸気を吸収し、設置された脱気筒から放出します。この仕様であれば今回のようなウレタン塗膜の膨れが発生することを防ぐことができます。

既存ウレタン塗膜の撤去作業中

費用的にはウレタン密着工法の方が安価です。しかし、今回の事例のように膨れが発生してしまうと、次の防水施工の際に、既存のウレタン塗膜を撤去する必要が生じるため、結果的に高くつくことになりかねませんので、長期的な視野で検討することが大切です。

既存のウレタン塗膜を撤去したうえで下地処理をし、通気緩衝シートを張り付けます。この通気緩衝シートは前述のように湿気や水分を逃がす役割がありますが、下地(押さえコンクリート)の動きの影響を受けにくくする(緩衝する)役割も担っています。そのような役割から、通気緩衝工法のことを絶縁工法という場合もあります。

通気緩衝シートを施工中 ウレタン防水通気緩衝工法施工後

解決策:面積が広い陸屋根には通気緩衝工法が適している。

屋根修理の失敗談③ ベランダ防水工事をしたら、かえって雨漏りが発生してしまった

軽量鉄骨造の住宅でベランダ防水工事をした結果、以前はなかった雨漏りが発生してしまいました。何が原因だったのでしょうか?

ベランダ防水工事をするまで雨漏りをしたことはありませんでしたので、防水工事に何らかの原因があって雨漏りが発生してしまった可能性があります。雨漏りが発生しないよう雨漏り予防を目的に施工した防水工事によって逆に雨漏りが起きたとすれば本末転倒です。

雨漏り調査(散水による雨漏り再現調査)の結果、ベランダの巾木(立ち上がり)部分に雨漏りの原因である雨水浸入位置がありました。巾木とは住宅の室内においては、床面に接する壁の下部に取り付ける部材のことを言います。装飾や汚れやすい壁下部の保護などが目的です。鉄骨造において、外壁の外装部材とベランダ床面の防水との取り合い(接地部分)を、モルタル巾木で仕上げるケースがあります。鉄骨造やRC造の建物の場合は、木造のような二次防水の概念がないため、一時防水である外壁表面から雨水が浸入した場合、その侵入した雨水はパネルの裏側を下方に流下していきます。流下した雨水が自然に排出される仕組みであれば問題はありません。しかし、排出されない場合は、行き場を失った雨水が室内側に侵入し、雨漏りを発生させることになるのです。

今回の雨漏りは、ベランダ防水工事の際に、巾木部分までウレタン塗膜防水を施工したことで、結果的に外壁の裏側に侵入した雨水の出口を塞いでしまったことが原因です。鉄骨造やRC造の建物において、ベランダ防水工事によって今までなかった雨漏りが発生した場合、今回のような防水工事によって雨水の出口を塞いでしまったというケースが少なくありません。特に立ち上がえり部分が巾木の形状になっている場合に多くみられる現象ですので注意が必要です。対策として、巾木の上部に水切り部材などを設置することで、雨漏りのリスクを低減する工夫などがあります。

ベランダ巾木部分の断面 ベランダ巾木上部に水切り設置

解決策:ベランダに巾木がある場合には、巾木の上部を必ず止水すること。

屋根修理の失敗談④ 塗装業者からメンテナンスフリーと勧められてALC外壁に石材調塗装を施工したら逆にメンテナンスが難しくなってしまった

ALCパネルの外壁は、ジョイント部分(パネルとパネルの間)の目地にシーリング材を充填することによって雨水の侵入を防いでいます。目地に充填されているシーリング材は、経年によって、次第に柔軟性がなくなり、劣化が進むと破断や剥離が発生します。ALCパネル目地のシーリングは定期的に更新する必要があります。

外壁塗装工事で使用される塗料の中に、石材調仕上げ塗材と呼ばれるものがあります。樹脂に着色した陶磁器質の骨材(模様を出すために用いられる砂や砂利上のもの)や粉砕した天然石などを加えた塗料です。均一に模様模様をつけるため吹付ガンを用いて吹き付け塗装をするのが一般的です。火山岩の断面のようなゴツゴツとした仕上がりで、骨材や天然石を含有しているため、一般的な塗装に比べてたいへん厚い塗膜です。

石材調塗膜

塗装業者によっては、この石材調仕上げ塗料による塗装工事を、メンテナンスフリーであると勧めるケースがあります。メンテナンスフリーである理由としては、塗膜が硬化する過程で骨材や天然石が連続的に接することによって、塗膜の色を形成する部分が無機系となり、色褪せなどが起こりにくくなるからでしょう。また、通常の塗料のように完全に造膜することなく、砂利が繋がりあったような状態で仕上がるため、ひび割れが目立ちにくくなります。ようするに見た目の印象だけでメンテナンスフリーと言ってしまっているのです。百歩譲って、もし塗料メーカーがメンテナンスフリーと言っているのであればまだ理解できます。塗料メーカーが責任を負うのは、自らが製造・販売している塗料の性能・販売している塗料の性能・性質に対してだけだからです。しかし、塗装工事をする工事業者の立場で言ってしまうのは大きな問題があります。依頼主にとってのメンテナンスフリーは、塗膜の性能や性質に対してだけではありません。依頼主にとってのメンテナンスフリーは外壁のメンテナンスそのものに対してだからです。

この石材調仕上塗材をALCパネルの外壁面に施工することは大きな問題があります。石材調仕上げ塗材の厚い塗膜によって、ALCパネル目地が完全に隠れてしまうからです。前述したようにALCパネル目地のシーリング材の破断・剥離は、構造上雨漏りに直結するため、目地のシーリング材は定期的に更新する必要があります。しかし、石材調仕上げの塗材の厚い塗膜によって目地シーリング部分が完全に隠れてしまっているので、劣化状況を確認する方法すらありません。建物の形状やALCパネルの寸法をもとに、おおよその目地の位置を予測することはできますが、正確な目地の位置はわかりません。既存のシーリングを撤去する際に用いるカッターなども、厚い骨材の層に阻まれなかなかシーリングまで届きません。どうにかシーリング材まで到達したとしても、石のようになっている表面ごと切断しなければなりません。カッターの刃が、それこそ歯が立たない状態になるのは想像に難しくありません。また、こういった工事を平気で行うようなレベルの低い工事業者の多くは、塗装前にシーリング材の更新を行いません。劣化したシーリングの上から塗装するのです。石材調の塗膜は「塗膜」といいながら、完全な塗膜を形成するわけではなく、砂利が重なり合ったような組成ですので雨水は浸透します。つまり石材調仕上げの塗材の厚い塗膜によって隠れた下地のシーリングが破断すれば、雨漏りに直結してしまう恐れがあるのです。

少し話がそれますが、例えば、ステンレス製の部材など、半永久的にメンテナンスが不要な建材は存在します。しかし、トラブルが起こるのは、たいていの場合、建材そのものからではなく、建材と建材の接合部、いわゆる「取り合い」で起こるのです。つまり、建築物が異種の建材の集合体である以上、メンテナンスが不要になることはありえないのです。このことは、建築やリフォームに携わるすべての人、あるいはリフォームを考えている全ての方に、是非心に留めていただきたいと思います。

解決策:ALCパネル外観には石材調仕上げ塗材を採用しない。

屋根修理の失敗談⑤ 外壁工事の際、斜壁のタイルを既存のまま残したら雨漏りが発生

鉄筋コンクリート造(RC造)は、その構造体である鉄筋コンクリート自体が非常に強く、止水性も高いとされています。とは言え、外壁の塗装やタイル、打継目地のシーリング、屋上防水など仕上げ面のメンテナンスは必要です。また、地震や鉄筋コンクリート自体の収縮などによって発生するひび割れも、そのまま放置すると雨水等が染み込み、鉄筋コンクリート自体を劣化させてしまいます。鉄筋コンクリート造(RC造)においても、建物を維持する観点から、定期的なメンテナンスが非常に重要となっています。

そんな鉄筋コンクリート造の建物における雨漏りの事例です。

築22年、鉄筋コンクリート造5階建て、タイル外観の建物です。過去に大規模修繕工事を1回施工されており、外壁タイルの浮き補修、冊子廻りや打継目地シーリングの打ち替え、タイル外壁を薬品洗浄して撥水材の塗布などを施工したとのことです。その大規模修繕工事が終わってから5年程度経過したころに雨漏りが発生しました。

現場を確認させて頂くと、窓冊子の上部から雨が落ちてくるとのことでした。早速冊子の上の外壁を確認すると、冊子から1mほど上までは垂直な外壁で、さらにその上は斜壁(斜めの壁)となっていました。大規模修繕工事の際に、この斜壁にはどのような工事をされたのか確認したところ、その他の外壁面と同じ仕様とのことでした。タイルの浮きや割れも少なく、雨漏りしているわけではなかったので、他のタイル外壁面と同様に、薬品洗浄をして撥水材を塗布しただけだったとのことでした。

斜壁を目視及び触診にて確認したところ、タイル目地が傷んで痩せてしまっています。また割れなどもありました。

斜壁タイル仕上げ

上の写真は漏水している冊子の上にある斜壁です。陸屋根部分にはしっかり防水工事が施工されていますが、斜壁側には笠木部分も含めて防水を施している様子はありません。

水を施している様子はありません。

雨漏り調査(散水による雨漏り再現調査)を実施して、雨水浸入位置を特定することになりました。鉄筋コンクリート造(RC造)の建物における散水調査では、被疑箇所1箇所あたりに2時間程度の散水を実施します。したがって1日に散水できる場所も限られてしまいますが、散水調査をしないままやみくもに修理してしまうと「せっかく修理をしたのに雨漏りが止まらない」という状況に陥りかねません。事前の調査によって雨水浸入位置を特定することで、初めて修理すべき場所、修理する方法を考えることができるのです。また、事前の散水調査で漏水を再現しておけば、修理が終わったあとで、雨漏りが止まっているかどうかの確認することも可能となります。

今回の物件では、タイル仕上げの斜壁への約1時間40分の散水によって冊子上から雨漏りを再現しました。斜壁以外の場所にも散水しましたが、漏水することはありませんでした。この調査結果から、今回の雨漏りは斜壁が雨水浸入位置であるという結論に至りました。

雨漏りのメカニズムは次のようになります。

①斜壁のタイル目地やタイルの割れから雨水がタイル裏にまわる。

②鉄筋コンクリートに浸透した雨水が下がっていく。

③流下してきた浸透水を冊子が受けて漏水する。

実は、RC造において斜壁が原因の雨漏りは決して少なくありません。そのため近年では「斜壁は【壁】ではなく【屋根】である」という考え方が主流になっています。具体的にはアスファルトシングル葺き、またはシート防水や塗膜防水を施工することが一般的になっています。

解決策:斜壁は屋根だと考えて処置すること。

屋根修理の失敗談⑥ 今まで雨漏りしていなかったのに、屋上防水工事をしたら雨漏りした

築20年、RC造、屋上は陸屋根でアスファルト防水コンクリート押さえ仕様の建物において発生した雨漏りの事例です。そもそも雨漏りなどの問題は何もなかったのですが、見た目の状態がだいぶ傷んでおり、さすがにそろそろ防水層もれかしているだろうということで防水工事を実施することになりました。屋上の外周にはパラペットと呼ばれる立ち上がりがあり、アゴと呼ばれる突起によって防水の端末に雨が掛かるのを防いでくれます。立ち上がり部分は押さえブロックで保護されており、仕上げはモルタル塗りでした。

防水仕様はウレタン塗膜防水の塗膜防水の通気緩衝工法としました。排水ドレンには改修用ドレンを取り付けます。滞留水分が熱射によって水蒸気化することで発生する防水層の膨れに対応するため、平場(平面)には通気緩衝シートを使用し、脱気筒により水蒸気などを排出させる仕様です。今回は陸屋根部分の防水工事のみであるため、外部足場などは設置せずに屋根上からの作業となりました。

防水改修工事完了から2か月後、最上階の天井付近から雨漏りが発生したとこいの連絡が入りました。防水工事をする前は雨漏りなど一切なかったにも関わらずです。しかし、防水とは別の何かが原因だろうと思いました。なぜなら施工した防水工事には万全を期しており、絶対の自信があったからです。すぐに現地に赴き屋上の状況を確認しました。やはり今回施工したウレタンボ塗膜防水には全く不審なところはありません。とは言え、最上階の天井付近には給水管や排水管は存在していないので、配管からの漏水などの可能性は考えられません。電気系統の配管も近くにはありません。そうなるとやはり陸屋根に何らかの問題になることがあります。

原因を特定すべく散水調査を実施したところ、意外な原因がわかりました。今回の防水改修工事では、パラペット部分もモルタル笠木の天端まで口があったのです。天端から全てをウレタン塗膜で防水したことで、その出口を塞いでしまったのです。その結果、逃げ場を失った雨水が立ち上がりの内部空間に溜まってしまい、オーバーフローして防水層裏側に流れ込み雨漏りになったというメカニズムです。屋上防水そのものは完璧な施工だったものの、結果的に外壁側から侵入した雨水の出口を塞いでしまったわけです。

屋上パラペット断面

調査結果にもとづいて外壁側の雨水浸入する位置の防水処理をしました。その後、雨漏りの連絡はありません。建物の形状は雑多であるため、固定観念で作業を行うと思わぬ落とし穴に嵌ることがあります。防水とは水を防ぐことで、意図せず水の逃げ場まで塞ぐことがあるので注意が必要です。

解決策:防水とは水を防ぐこと、意図せず水の逃げ場まで塞ぐ場合があるので要注意。

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