京都でよく見る「むくり屋根」とはどんな屋根?むくり屋根の特徴や歴史を深掘り

京都など、古くからある町を歩いていると古風な町屋が多くみられますよね。その中に、一見周りの町屋と馴染んでいても屋根の形が他と違う、少しカーブを描いたような屋根が紛れ込んでいる時があります。これは「起り(むくり)屋根」といい、なだらかな凸状になっている屋根のことです。

今回はこの「むくり屋根」について深く掘り下げていきます。

むくり屋根の歴史

むくり屋根は日本独自に発展してきた屋根の建築様式といえます。柔らかな曲線を描く屋根から感じられるように、低姿勢、丁寧さが表現されている屋根です。そのような日本人独自の精神性が浸透し、むくり屋根は日本の身分制度にも影響を与え、商家や公家屋敷、数寄屋建築に積極的に取り入れられたと言われています。

むくり屋根と京都の関係

京言葉では「むくり」のことを「柔らかな丸み」とも表現しているように、むくり屋根の特徴は屋根がなだらかな凸状になっていることです。流れの長さ(棟から軒までの長さ)が大きい京町家などにおいて、あまり勾配をきつくせずに水量が多い軒先の勾配を大きく取る工夫でもあるとされています。

また、前節でも少しお伝えした通りむくり屋根は商家や公家屋敷、数寄屋建築などに多く採用されていました。かつては天皇が住んでいた京都では、まさに商家や公家屋敷、数寄屋が数多くありました。日本建築の最高峰と言われる桂離宮もむくり屋根で造られており、古くから親しまれてきた屋根の建築様式であることが伺えますね。

「そり(てり)屋根」と「むくり屋根」

そり屋根

むくり屋根とは対照的にお城や寺院などの屋根は反っている屋根が多く見られます。これは「そり屋根」と呼ばれ、中国などの大陸から伝来されたものと言われています。そのため、中国の仏閣などでもみることができます。格式や荘厳を表現していることから、日本でも反り屋根は神社や仏閣に採用されるようになりました。

話はズレますが、「そり」と「むくり」は日本の伝統様式と切っても切れない深い関係があるというのはご存知でしょうか?「そり」でいうと日本刀、「むくり」でいうと玉手箱や硯箱の蓋、お茶碗など今でも私たちの生活に馴染んでいるものの中に見られます。また「てりむくり」とも呼ばれる日本建築を表すこの曲線は日本独自の形状であり、神社仏閣の唐破風(からはふ)、神輿の屋根が典型です。日本建築のお風呂屋さんの玄関屋根にも見ることができます。

また、2012年に竣工したスカイツリーにも「てりむくり」が取り入られています。日本古来の美意識と伝統工芸、そして最新技術が融合したランドマークというわけですね。

「そり」「むくり」「てりむくり」は日本の伝統や文化を形作るものとして何かと重要な役割を持っているのです。

京都で見れるむくり屋根建築

最後に、京都で見ることができるむくり屋根の建物をいくつかご紹介します。

桂離宮

桂離宮

京都市西京区にある桂離宮は、1615年に智仁親王が造営に着手しまし、約47年後の智忠親王(2代)の代にほぼ完成した別荘です。約6万9400㎡の敷地に、古書院、中書院、新御殿を主に、池のまわりに書院、茶亭を配し、庭と建築の構成、融合が見事で、離宮建築最高の技法と、日本庭園美の集大成といわれています。

二条城

二条城二の丸御殿
(▲二条城二の丸御殿)

京都市中京区、京都の市街地にある二条城は言わずと知れた京都の有名な観光地ですね。1603年徳川家康によって建てられました。明治維新により皇室の離宮となった二条城ですが、元々は徳川家康が天皇や公家のいる京都御所や公家町、京都の守護と上洛時の宿所として造営したお城です。

二条城本丸御殿
(▲二条城本丸御殿)

一方で、表は威厳のあるそり屋根が印象的ですが、実は当時の宮家の生活空間であった本丸御殿はむくり屋根で造られています。ここにも、そり屋根とむくり屋根それぞれの役割を見ることができますね。

京都迎賓館

京都迎賓館

京都市上京区、京都御苑内にある京都迎賓館は2005年に平安建都千二百年記念事業として国によって建てられました。建物や調度品には、数寄屋大工、左官、作庭、截金、西陣織など、数多くの京都を代表する伝統技能が用いられています。この迎賓館の屋根もおおらかな丸みを帯びたむくり屋根となっており、薄い緑色単色で施工された広々とした屋根はどっしりした重圧感を持ちつつ穏やかな印象も感じさせます。

一般公開もされているみたいなので、京都にお越しの際は京都御所と一緒に是非訪れてみてくださいね。

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