屋根の軽量化は何故必要?行政が推進する理由とは

屋根の軽量化

近年、大型台風や地震による住宅被害が頻繁に発生しています。

中でも屋根の被害が多く、屋根材の破損や飛散、落下など今後の生活に支障をきたすような災害になることも少なくありません。

屋根材は重い方が台風時に飛散しにくいといえますが、逆に万一飛ばされてしまった場合には被害が拡大してしまうことにもなりかねません。

また屋根を軽量化することによってさまざまなメリットがあります。

そこで本記事では屋根を軽量化することのメリットや注意点、行政が屋根の軽量化を推進する理由について紹介します。

屋根を軽量化するメリットとは?

1995年に発生した阪神・淡路大震災では、屋根瓦と2階の重みで1階部分が耐え切れず、建物が倒壊してしまう被害が数多く見られました。

古くからの日本の家屋の屋根材には日本瓦が多く使われてきましたが、屋根が重くなってしまうので地震の際には揺れが増幅されてしまうというデメリットがあります。

屋根材の種類は大きく分けると、瓦屋根、スレート屋根、金属屋根の3つがあります。

そして屋根材の1㎡あたりの重さは種類によって大きく異なり、瓦屋根が約42㎏/㎡(土葺き屋根の場合は約60㎏/㎡)なのに対して、スレート屋根(コロニアル等)が約20㎏/㎡、金属屋根が約5~6㎏/㎡になります。

建築基準法においては、各屋根材は「非常に重い屋根」、「重い屋根」、「軽い屋根」の3つに分類され、土葺き屋根は「非常に重い屋根」、瓦屋根は「重い屋根」、スレート屋根と金属屋根は「軽い屋根」に該当します。

屋根が重くなるほど建物の構造躯体には大きな負担がかかり、同じ屋根面積であれば瓦屋根と金属屋根とで比較すると8倍ほどの差が生じます。

また軽い屋根と重い屋根とでは、重い屋根の方が必然的に家屋の重心の位置が高くなってしまうため不安定さが増し、地震が発生した際には揺れが大きくなるので建物の倒壊リスクが高まります。

したがって屋根の重さによる分類は、建物の耐震性能を比較する上で極めて重要な指標になることがわかります。

このように屋根を軽量化することは代表的な耐震改修方法のひとつとして広く知られており、建物の構造躯体にかかる負担を減らして耐震性能を向上させることができるようになります。

屋根の軽量化を行う場合の費用と注意点

古い家の屋根は瓦であることが多く、構造躯体の老朽化も築年数相応に進んでいるので、躯体の耐震補強をするよりも屋根工事を行った方が予算面では優位になることが多いようです。

また軽量な屋根材に葺き替えることで、単に耐震性能だけではなく低下した防水性能を同時に向上させることができます。

金属屋根を採用すれば瓦の1/8ほどの軽さになるので、地震が発生しても瓦のように建物が倒壊してしまうリスクが低減されます。

一方、一般的には屋根材は重い方が台風時には飛ばされてしまうことが少ないので安心ともいえますが、近年の台風は大型化しているため、逆に重い瓦が飛散してしまって被害が拡大するケースも時々見られます。

軽量な屋根材であっても正しく施工することで、強風で飛散してしまう危険性を回避することが可能になります。

しかし重い屋根材を使用している家が必ずしも耐震性能が低いというわけではないので注意が必要です。

重要なのは建物の構造強度と屋根の重量とのバランスなので、重い屋根に適した強度を保有している建物であれば問題がないことを知っておくことが大切です。

したがって築年数が比較的新しい家であればきちんと構造上の検討が行われているので、たとえ瓦屋根であったとしても問題がないことが多いといえます。

決して業者のセールストークに惑わされてしまうことがないように注意が必要です。

また屋根の軽量化を行ったとしても、それだけでは十分な耐震性能を確保できないこともあります。

住宅を支える基礎の強度が不足していたり、著しく柱や梁が劣化していたりすると、どんなに屋根を軽量化しても万全とはいえません。

いずれにしても、建物が現在の耐震基準を満たしているかどうか、満たしていない場合にどのような耐震補強を行うのかは、専門家による「耐震診断」を行った上で判断することが大切です。

次に屋根の軽量化を行う場合には、費用の問題があります。

一般的な日本瓦やセメント瓦などの重い屋根材から軽量なガルバリウム鋼板に葺き替える場合には、床面積20坪程度の家でも100万円前後の費用がかかります。

耐震診断も併せて行う場合には、さらに約10万円程度(一般診断法の場合)の費用を見込んでおく必要があるでしょう。

行政が屋根の軽量化を推進する理由と自治体の補助金を受給する際の注意点

我が国の耐震基準は、大きな地震が発生するたびに何度も見直されてきました。

そして2018年の基準では、震度7の地震でも建物が倒壊しないことが求められています。

これは単に国民の生命や財産を守るためだけではなく、災害に強い国土・地域の構築に向けた建築物の耐震化が国の政策によって進められているためです。

すなわち耐震強度が低い建物を耐震補強しようとする際には、公的な支援があります。

したがって自分が所有している建物の耐震性に不安があるものの改修資金がないためになかなか耐震補強工事に踏み切れないといった場合であっても、公的な補助金・助成金を利用して工事を行うことが可能になっています。

現在多くの自治体では、1981年(昭和56年)5月以前の基準で建築された住宅に対して、耐震診断や耐震補強工事にかかる費用を補助する制度を設けています。

これらの建物は「旧耐震基準」で建てられているため、現行の「新耐震基準」を満たしていない可能性が高いためです。

具体的には耐震診断の結果、「一応倒壊しない」とされる上部構造評価レベル1.0に満たない住宅が補助金・助成金の対象となり、施工後にレベル1.0を満たすことが補助金・助成金交付の要件となります。

耐震補強工事には、建物の基礎の補強工事や接合部の補強工事、壁の補強工事(筋違の増設等)などがありますが、「屋根の軽量化」も補助金の対象となる工事として認められています。

ただし補助金の額(限度額等)や支給条件などは各自治体によって異なるので、実際に耐震補強工事を行なおうとする場合には、事前にお住まいの自治体に細かい内容を確認しておく必要があります。

尚、一般的な補助金支給の条件には次のようなものがあります。

・昭和56年5月31日以前に建築していること(旧耐震基準)

・木造軸組み工法で2階建て以下の建物であること

・戸建住宅、共同住宅等居住する目的の建物であること(空室の場合は不可)

・市民税、固定資産税などの滞納や未納がないこと

・過去に耐震対策補助を受けていないこと

・耐震補強工事後に上部構造評点が1.0以上となる工事であること

まとめ

屋根を軽量化することにはさまざまなメリットがありますが、一般的には耐震補強工事の一環としてよく行われています。

耐震補強工事は国が推進していることもあって、条件さえ満たせば自治体の補助金や助成金を利用することができる場合があります。

現在、全国の8割近くの自治体で何らかの耐震補強工事に対して補助金・助成金を支給しており、屋根の軽量化も例外ではありません。

また耐震診断の結果、評点が低い建物の場合には大掛かりな改修工事が必要になってしまうので、費用負担も大きくなります。

その場合には時期を分けて段階的に改修しても、補助金の受給対象になることもあります。

自治体によってさまざまなケースがあるので、屋根を軽量化したいと思った時にはまずは工事を依頼する予定の会社に相談してみることをおすすめします。

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