茅葺き屋根の補修方法やメンテナンス頻度について解説

「茅葺き屋根」とは、どのような屋根かご存知でしょうか?
現在では少なくなっていますが、世界文化遺産の白川郷や五箇山の合掌造り集落、重要伝統的建造物群保存地区となっている大内宿あたりが有名な場所で、すすきやヨシなどを素材に使った屋根のことをいいます。

茅葺き屋根は古民家のリフォームとしても人気があります。しかし、リフォームはスレートや瓦屋根と同じようにできるのか?

このような疑問を持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、茅葺き屋根の補修方法やメンテナンスについて解説するので、ぜひ参考にしてください。

茅葺き屋根とは

すすきやチガヤ、ヨシ、ちがやなどの総称である茅(かや)を素材に使った屋根を「茅葺き屋根」、または「茅葺屋根」といいます。屋根材によっては藁葺(わらぶき)や草葺(くさぶき)と呼ぶ場合もあります。

茅葺きは、世界でもっとも原初的な屋根と称され、日本では縄文時代の竪穴式住居がもっとも古い茅葺きの屋根です。特徴として、断熱性・通気性・保湿性・雨仕舞・吸音性などを兼ね備えており、寿命も30年以上と非常に長い耐久性を誇ります。

一方で、火に弱く、火事になった際はあっという間に延焼してしまうという弱点もあります。

3つの茅葺き屋根の形

茅葺き屋根のなかでもいくつか形があり、寄棟造り、切妻造り、入母屋造りの3つのタイプがあります。世界文化遺産の白川郷や五箇山の合掌造りは切妻造りになります。

使用する素材によっては耐用年数が異なる

茅葺き屋根を構成する際の材料によって寿命が異なるため注意が必要です。すすきを使用した場合は30年を超える耐用年数といわれています。しかし、ヨシと呼ばれるイネ科の植物を使用した場合はさらに10年長い40年以上と長期的に使用が可能です。

一方で、小麦と稲を使用した場合は、耐久性がないため5〜7年程度で寿命を迎えるとされています。

茅葺き屋根が減っている理由

茅葺きの屋根が減っている理由は以下の3つがあります。

・建築基準法で新築は原則禁止されている
・施工できる業者や職人が減っている
・高い維持費がかかる

それぞれ解説します。

建築基準法で新築は原則禁止されている

茅葺き屋根の家は1950年に燃えやすい素材として、市街地に建てることは建築基準法によって禁止されており、建設できません。

しかし、2006年11月宮城県石巻市において、建築基準法第22条と準防火地域を除いて実験などで不燃材と同等の性能が認められている素材を使う場合に限り、規制区域を緩和することで新築でも建築が可能となっています。

施工できる業者や職人が減っている

施工できる業者や職人が限られているのも、茅葺き屋根の住宅が減っている理由の一つです。もともとは、地域住民同士の助け合いによって成り立っていましたが、そういった風習もなくなってきており施工できる職人もいなくなっている現状があります。

高い維持費がかかる

具体的な費用などは後述しますが、茅葺きの屋根を補修するためには高額な費用が発生します。すすきなどの素材の高騰化している背景があり、高い維持費がかかることから、維持できずに減少してしまったことが挙げられます。

茅葺き屋根は雨漏りが起こりにくいといわれている理由

茅葺きの屋根は、雨漏りが起こらない・起こりにくいといわれています。その理由は以下の2つがあります。

・導水効果によるため
・急勾配の形状のため

導水効果(どうすいこうか)とは、別の場所へ水を流すことです。茅葺き屋根は茅を束ねることで、雨水が表面のみに流れるようになり、下まで水が浸入するのを防ぎます。

また、茅に使用する植物の茎に付着している油分が防水の役割をしており水に強い性質のため雨漏りが起こらない、または起こりにくいといわれています。

さらに、茅葺き屋根の特徴として屋根が急勾配になっています。急勾配になることで雨水がたまらずに、軒下まで流れることから雨漏りが起こりにくいといわれている理由の一つです。急勾配の構造は、雨だけでなく豪雪地帯でも同様に地面へ滑り落ちていくため、茅葺き屋根が好まれています。

ただし、経年劣化によって茅を束ねている縄が緩んでくると隙間が発生しやすくなります。隙間が発生すると導水効果もなくなり、雨水が浸入し雨漏りにつながります。茅の束が崩れない限りは雨漏りするリスクは低いでしょう。

茅葺き屋根のメンテナンス方法と頻度の目安


(※画像引用:有限会社持田屋瓦建材様

茅葺き屋根をメンテナンスする方法としては、「丸葺き」「分割葺き」「差し茅(さしがや)」の3つがあります。丸葺きは、全面を張り替える葺き替え工事です。分割葺きとは、屋根をいくつかに分けて葺き替える方法で、差茅は傷みが進行している場所のみを取り替える方法です。

メンテナンス頻度は、15〜20年程度を目安に傷んでいる部分を差し茅の方法で取り替えることで、長く大切に住み続けられます。

葺き替え屋根はカバー工法も可能

茅葺き屋根は実は、別の屋根材で覆うカバー工法も可能です。トタンやガルバリウム鋼板などの金属屋根への改修が可能です。スレートなど一般的にカバー工法で使われる屋根材でも使用できます。

カバー工法であれば茅の屋根を撤去しなくてもよく、撤去費用もかからないため、費用を抑えられます。また、茅の傷みも抑えられ、茅のメリットでもある断熱性や保湿性・吸音性なども活かすことができます。

カバー工法での施工方法

新しい屋根を設置する際は、茅葺き屋根の軒先部分を切りそろえないと設置できません。茅にはクギなどは使えないため、固定用の下地材を茅の下にある木材にワイヤーで括ってから屋根材を設置します。

施工時の注意点として茅と新設する屋根材の間に空気の通り道である空気層を設けないと、湿気がたまりカビが発生したり、茅が腐食したりする場合もあるため注意が必要です。

茅葺き屋根の補修費用相場

コスト

茅葺き屋根をリフォームする場合、分割葺きや差し茅で500万円程度、全面葺き替える丸葺きで1,000〜2,000万円と高額です。一般的な屋根の葺き替えにかかる費用が200万円程度のため、かなり高額といえます。

上記費用には人件費や足場代、材料費、廃棄処分費用なども含まれます。高額費用の背景には、すすきやヨシなどの価格が高騰していることに加え、茅葺き屋根に関する知識や施工技術をもった職人が少なくなっている現状があります。

また、トタンや金属屋根などを被せるカバー工法の場合は100〜200万円程度と、上記の丸葺きや差し茅などの高額な費用に比べて工事費用を抑えることができます。

茅葺き屋根のメリット

茅葺き屋根にするメリットは以下のとおりです。

・機能性に優れている
・耐久性が高い
・環境負荷が少ない

それぞれ解説します。

機能性に優れている

茅葺き屋根は茅を束ねて設置することで茅の表面に雨水が流れる仕組みができ、加えて雨水が中へ浸入するのも防いでくれます。束ねる効果は、吸音性にも優れており外からの騒音を防ぐ効果もあります。

また、茅の束が空気の通り道を作ることで通気性にも優れ、茅が断熱材の役割も担っており夏は涼しく、冬は暖かく過ごしやすいなどのさまざまな機能性に優れている点は茅葺き屋根特有のメリットです。

耐久性が高い

使用する素材にもよりますが、すすきやヨシなどを使用する場合、しっかりとメンテナンスしてあげることで30〜40年以上使用できます。

環境負荷が少ない

使用する茅は自然素材のため、環境にやさしく農場などの肥料としてリサイクルも可能です。

茅葺き屋根のデメリット

デメリット

茅葺き屋根のデメリットは以下のとおりです。

・燃えやすい
・強風に弱い

それぞれ解説します。

燃えやすい

茅葺き屋根に使われる茅は自然素材のため簡単に燃えてしまいます。メリットの一つでもある通気性が火事になった際に燃焼しやすい条件へと変化してしまいます。

燃えやすく全焼につながるリスクが高いことから、住宅が密集している地域や新築での建築が禁止されている理由でもあります。

強風に弱い

茅は竹に針や縄で固定しますが、現代の屋根のクギなどの固定方法に比べて、茅は軽い素材のため台風や強風などで吹き飛んでしまうリスクは高いです。

茅葺き屋根の補修を依頼する場合の業者選びのポイント

茅葺き屋根の補修を依頼する場合の業者選びのポイントは以下のとおりです。

・茅葺き屋根の施工や補修実績のある業者を選ぶ
・見積もりは2〜3社比較して決める
・見積もりの内容や返答にも的確に回答しているか
・保証やアフターフォローは充実しているか
・口コミや評判を確認する

それぞれ解説します。

茅葺き屋根の施工や補修実績のある業者を選ぶ

茅葺き屋根は素材の扱いであったり、施工方法に知識や技術が求められます。そのため、茅葺き屋根の施工・補修実績がある業者を選ぶようにしましょう。

施工実績のない業者の場合、注意点として挙げた空気層を設けていなかったり、間違った施工をしてしまう可能性があります。

見積もりは2〜3社比較して決める

業者を決める際は、必ず見積もりを比較して工事費用の相場を知ることが大切です。価格の比較は2〜3社程度が決めやすくておすすめです。

工事費用の相場を把握せずに1社のみで決めてしまうと、余計な工事費用を払う可能性があります。茅葺きの場合、施工業者が限られるため、悪徳業者に当たってしまうと不当に価格を上乗せされてしまう可能性もあるため、十分注意するようにしましょう。

見積もりの内容や返答にも的確に回答しているか

見積もりを取るだけでなく、内容や業者の説明にも注意して見聞きしてみましょう!見積もりの内容が細かく書かれているかがポイントです。

使用する建材や塗装のメーカー名、塗布量、乾燥工程などがしっかり書かれているか。「工事費用一式」や「塗装費用一式」などとまとめて記載されている場合は要注意です。

見積もりを依頼する側は素人の方が多いはずです。そこにつけ込んで、屋根に適した材料よりもワンランク下の低グレードの価格を入れて、差額分を利益にしようとする業者もいます。

また、どうしてその建材を使うのか、その作業が必要なのかをしっかりと説明できる担当者かどうか見極めましょう。質問に対する返答がわかりやすいかどうかも注目してみてください。

保証やアフターフォローは充実しているか

茅葺き屋根の工事後は、不具合が出ないとも限りません。工事後に不具合があった場合、すぐに対応してくれる業者を選ぶようにしましょう。

また、工事保証として5年や10年などの長期保証や、1年ごとなど定期的に点検を実施してくれる業者であれば安心です。契約前にどのような症状で保証してくれるのか、アフターフォローはあるのかを必ず確認するようにしましょう。

口コミや評判を確認する

業者を選定する前は、Googleや口コミサイトで評判をチェックしてみるのもおすすめです。悪い評価があった場合、何に対して悪い評価になっているのかを検証してみましょう。

すべて満点やよい評価が多すぎるのも、サクラなどの操作されている場合がありますので要注意です。

口コミに関しては、以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

まとめ

今回は、茅葺き屋根の補修方法やメンテナンス頻度について解説しました。茅葺き屋根の補修方法は以下の3つです。

・丸葺き
・分割葺き
・差し茅(さしがや)

丸葺きは全面を張り替える工事、分割葺きは段階的に分割して葺き替える方法です。差し茅は傷んでいる部分のみを取り替える工事になります。

茅葺き屋根のメンテナンス頻度は15〜20年程度を目安に傷んでいる茅を取り替えることで、長く茅葺き屋根に住むことができます。ただし、茅などを使ったメンテナンスは非常に高額です。分割や差し茅などでも500万円ほどかかり、全面丸葺きとなると1,000〜2,000万円もかかります。

高額な理由は屋根の素材となるすすきやヨシなどが高騰していることや、茅葺き屋根の施工・補修できる業者が限られることも価格が高騰している理由の一つです。

茅葺き屋根のメンテナンスが費用的に厳しいという方は、トタンや金属屋根のカバー工法をおすすめします。カバー工法であれば100〜200万円程度で、差し茅や丸葺きなどに比べて費用を抑えることができます。

茅葺き屋根のリフォームをする際は、茅葺き屋根の施工や補修実績のある業者を選ぶことをおすすめします。施工実績のない業者の場合、間違った施工をしてしまう可能性があります。

茅葺き屋根の施工実績のある業者は全国でも限られています。希少な茅葺き業者を探すなら「屋根修理の匠」がおすすめです。屋根修理の匠は全国の優良業者がすぐに見つかる検索サイトです。掲載されている業者はすべて「自社施工の職人直営店のみ」が登録しています。

自社施工の直営店は下請けに依頼しないため中間マージンが発生しません。適正価格で実績豊富な職人による高品質な工事が期待できます。茅葺き屋根でリフォームをお考えなら、ぜひ「屋根修理の匠」をご活用ください。

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