屋根のカバー工法とは?特徴やメリットなどを徹底解説

屋根のリフォームやメンテナンスを考える際、「カバー工法」という言葉を耳にしたことはありませんか?正直なところ、「カバー工法」と聞いてもピンとこない方が多いでしょう。そこで今回は、カバー工法の特徴、メリット、デメリットについて詳しく解説します。カバー工法を理解することで、あなたの住まいに最適な屋根のリフォーム方法が見えてくるはずです。

屋根の「カバー工法」とは

屋根の「カバー工法」とは、既存の屋根に新しい屋根材を被せる施工方法です。「重ね葺き」や「カバールーフ工法」とも呼ばれ、屋根のリフォームでよく採用される工法の一つです。既存の屋根が勾配屋根の場合、新規屋根材を被せる前に「ルーフィングシート(防水シート)」を施工するため、屋根の防水性が向上します。

屋根のリフォームでは、既存の屋根材にアスベスト(石綿)が含まれている場合があり、その処分費用が高額になりがちです。しかし、「カバー工法」を採用すれば既存の屋根材を活かせるため、コストを抑えられるというメリットがあります。

屋根のカバー工法と「葺き替え・葺き直し」の違い

屋根のリフォームには、カバー工法のほかに「葺き替え」や「葺き直し」があります。ここでは、これら3つの工法の違いを解説します。

屋根の「葺き替え」との違い

カバー工法と「葺き替え」の違いは、次の2点です。

・既存屋根材の撤去の有無
・屋根下地の確認・補修の可能性

「カバー工法」は既存の屋根材を活かすのに対し、「葺き替え」では既存の屋根材を撤去します。そのため、「葺き替え」では野地板やルーフィングシート(防水シート)といった屋根下地の確認・補修が可能です。雨漏れなど屋根下地の補修が必要な場合は、「葺き替え」がおすすめです。

屋根の「葺き直し」との違い

カバー工法と「葺き直し」の違いは、次の2点です。

・既存屋根材の剥がし・再利用の有無
・屋根下地の確認・補修の可能性

「カバー工法」は既存の屋根材の上から新規屋根材を被せますが、「葺き直し」では一度既存の屋根材をすべて剥がし、その後再度葺き直します。屋根下地の確認・補修については「葺き替え」と同様ですが、既存の屋根材を再利用するため「葺き替え」よりもコストを抑えられます。
このように、雨漏れなど下地の補修を伴う屋根リフォームで、予算を抑えたい場合には、屋根の「葺き直し」がおすすめです。


カバー工法の施工可否〈屋根材別〉

屋根の「カバー工法」の施工可否は、既存の屋根材によって判断します。また、既存の屋根に新規屋根材を被せるといった工法のため、既存屋根の素材や形状によっても施工不可となる場合もあり、注意が必要です。
屋根の「カバー工法」における屋根材別の施工可否は、以下のとおりです。

屋根材 カバー工法の施工
スレート(コロニアル・カラーベスト)
金属屋根
アスファルトシングル
瓦屋根全般 ×

「日本瓦」や「洋瓦」などの瓦屋根は、その材質や形状によってカバー工法が適用できないケースが多いです。そのため、カバー工法を検討する前に、必ず既存の屋根材を詳しく確認しましょう。

カバー工法のメリット3つ

メリット

ここでは、屋根のカバー工法におけるメリットについて解説します。カバー工法には主に次の3つのメリットがあります。

1. 廃材処分費の抑制
2. 短工期
3. 住まいの断熱性・遮音性の向上

それでは、これらのメリットを詳しく見ていきましょう。

【メリット1】廃材処分費を抑制

カバー工法は、「葺き替え」と異なり既存の屋根材を撤去しません。これにより、工事で発生する廃材量が減少し、処分費用を抑えられます。特に、既存の屋根にアスベスト(石綿)が使用されている場合、その処分費用は高額になります。そのため、既存の屋根を活かすカバー工法は大きなメリットとなります。

【メリット2】短工期

屋根のカバー工法は、屋根の「葺き替え」などに比べて短い工期で工事が可能です。個々の屋根リフォームにおける工期は、以下の通りです

屋根リフォームの種類 工期
カバー工法 7~9日
屋根の葺き替え 9~12日
屋根の葺き直し 9~12日

主に、野地板やルーフィングシート(防水シート)といった屋根下地の補修にかかる期間が短縮できるため、カバー工法は短工期となっています。

【メリット3】住まいの断熱性・遮音性の向上

カバー工法では、屋根が二重構造になるため、住まいの断熱性と遮音性が向上します。これにより、夏の暑さや梅雨時の雨音が軽減されます。さらに、勾配屋根の場合、新しい屋根材を被せる前にルーフィングシート(防水シート)を施工するため、防水性も高まります。

カバー工法のデメリット3つ

一方で、屋根のカバー工法にはデメリットも存在します。主なデメリットは以下の3点です:

1. 建物への負荷が増加
2. 状況によっては施工ができない
3. 屋根下地が確認できない

それでは、これらのデメリットを詳しく見ていきましょう。

【デメリット1】建物への負荷が増加

カバー工法では、既存の屋根材に新しい屋根材の重量が加わります。これにより建物への負荷が増し、全体の耐震性が低下する可能性があります。建物への負担を軽減するため、できるだけ軽量な屋根材を選択しましょう。

【デメリット2】施工できない状況がある

屋根の状態によっては、カバー工法が適さないケースがあります。例えば、雨漏りで屋根下地の野地板が著しく劣化や腐食している場合、下地を補修しないカバー工法は最適なメンテナンス方法とは言えません。カバー工法は「屋根下地に損傷がないこと」が前提条件となるため、下地の腐食が疑われる場合は「葺き替え」や「葺き直し」を検討すべきです。

【デメリット3】屋根下地の確認が不可能

カバー工法では、既存の屋根に新しい屋根を被せるため、下地の状態を確認できません。特に日本瓦など頑丈で厚みのある屋根材の場合、上からの下地確認は困難です。カバー工法施工後に下地の腐食が判明し、再度葺き替えが必要になる事態を避けるため、事前の綿密な調査が重要です。

屋根のカバー工法にかかる費用の相場

ここでは、屋根のカバー工法にかかる工事費用の相場について解説します。戸建て住宅における屋根のカバー工法にかかる費用の相場は、以下のとおりです。

工事内容/費用項目 費用相場(㎡)
仮設足場 700〜1,000円
養生シート 200〜300円
ルーフィングシート貼り(勾配屋根の場合) 600〜1,000円
新規屋根材設置(スレート屋根/ガルバリウム鋼板など) 7,000〜11,000円
棟包み・軒先・ケラバ設置(勾配屋根の場合) 3,000〜11,000円
工事総額 11,500〜24,300円

例えば、一般的な戸建て住宅(30坪程度、勾配屋根)の場合、屋根のカバー工法にかかる費用の相場は約110万〜240万円です。ただし、陸屋根の場合は勾配屋根よりも費用が抑えられる傾向にあります。

カバー工法の工事手順

屋根のカバー工法における工期の目安は、およそ7〜9日が目安になります。ここでは、屋根のカバー工法における工事手順について解説します。

【1】近隣挨拶

工事着工の3〜7日前に、近隣住民への挨拶を行います。職人の車両や足場の騒音など、工事による影響を丁寧に説明します。レッカー作業が必要な場合は、その旨も伝えます。

【2】足場設置・養生

カバー工法は高所作業のため、安全確保のために足場を設置します。その後、落下防止用のシート養生も施し、作業の安全性を高めます。

【3】〈勾配屋根の場合〉棟板金・貫板撤去

既存の棟板金と貫板を撤去します。同時に、下地の腐食状態を確認し、必要に応じて補修を行います。

【4-1】〈陸屋根の場合〉タイトフレームの取り付け

陸屋根の場合、新規屋根材設置のためのタイトフレームを既存屋根全体に取り付けます。

【4-2】〈勾配屋根の場合〉ルーフィングシート(防水シート)貼り

勾配屋根の場合、防水性向上のためにルーフィングシート(防水シート)を屋根全体に施工します。

【5】新規屋根材葺き

新しい屋根材を既存の屋根全体に重ねて施工します。

【6】板金部に防水コーキング

新規屋根材の板金部分に防水コーキングを施し、防水性を強化します。

【7】足場解体・清掃

足場を解体し、建物周辺の細かい廃材を清掃して工事完了となります。工期が延長した場合は、再度近隣住民に挨拶し、お詫びします。

カバー工法による屋根工事の事例3つ

ここでは、屋根修理の匠で紹介可能な業者が施工した、カバー工法による屋根工事の事例を3つほど紹介します。

【事例1】陸屋根でもカバー工法を上手に活用

工事のきっかけ 雨漏れ
屋根タイプ 陸屋根
新規屋根材 ガルバリウム折板
工事場所 大阪府泉大津市

既存の陸屋根は、全体的にサビがひどく、雨漏れも発生している状況。既存の屋根はそのままにタイトフレームを設置し、ガルバリウム素材の屋根材を用いたカバー工法を施工しました。

【事例2】下地が傷む前にカバー工法で屋根をメンテナンス

工事のきっかけ 経年劣化
屋根タイプ 勾配屋根
新規屋根材 スーパーガルテクト
工事場所 東京都武蔵村山市

屋根には経年劣化が見られましたが、屋根下地に著しい腐食はないと判断し、屋根のカバー工法を選択しました。新規屋根材には、高い断熱性能を持つ「スーパーガルテクト」を採用。耐久性・意匠性についても文句のない屋根に生まれ変わりました。

【事例3】スレート屋根で費用を抑えてカバー工法

工事のきっかけ 経年劣化
屋根タイプ 勾配屋根
新規屋根材 スレート屋根
工事場所 神奈川県横浜市戸塚区

カバー工法で人気の「スレート屋根」は、徐々に表面の汚れやカビが目立ってくるのが弱点。ほかの屋根材に比べてメンテナンスサイクルも短いこともあり、スレート屋根で費用を抑え、カバー工法で屋根を一新しました。

カバー工法の注意点

最後に、屋根のカバー工法における注意点について解説します。主な注意点は以下の4つです。

・既存屋根より軽量の屋根材を選ぶ
・カバー工法は一度だけ
・太陽光発電に注意
・火災保険の修繕方法として対象外になることも

それでは、詳しく見ていきましょう。

既存屋根より軽量の屋根材を選ぶ

カバー工法では、新規屋根材は既存屋根より軽量のものを選びましょう。既存の屋根材に新しい屋根材を重ねるため、建物への負荷が増加し、耐震性が低下する可能性があります。既存屋根の状態や今後の住まい方を考慮し、適切な重量の屋根材を選択することが重要です。

カバー工法は一度だけ

カバー工法による屋根リフォームは一度しか施工できません。すでにカバー工法を施した屋根に再度カバー工法を行うことはできません。前述のとおり、カバー工法は建物への負荷が懸念点となります。二度のカバー工法は建物に過度な負荷をかけ、耐震性の観点からも推奨できません。

太陽光発電に注意

カバー工法を施工する際は、太陽光発電設備に注意が必要です。太陽光発電とカバー工法による新規屋根材により、建物に二重の負荷がかかるため、事前に建物の構造計算が不可欠です。構造計算で不適合と判断された場合、カバー工法は施工できません。また、太陽光発電の有無によって注意点が異なります。以下では、いずれの場合も事前に構造判定をクリアしたと仮定して説明します。

〈1〉既存の屋根にすでに太陽光発電がある場合

既存の屋根に太陽光発電設備がある場合、カバー工法の施工時に設備の脱着が必要になります。この脱着費用を予算に組み込むことを忘れないでください。また、工事中は取り外した太陽光パネルの保管スペースも確保しましょう。

〈2〉今後太陽光発電を設置する予定がある場合

カバー工法の施工後に太陽光発電の設置を予定している場合は、設置時期を明確にし、可能な限り早期の設置を検討しましょう。例えば、10年後の設置予定では、その時点での太陽光発電設備が現在のものと異なり、重量が変化する可能性があります。現時点で構造計算をクリアしていても、10年後にクリアできなければ、太陽光発電を設置できなくなる恐れがあります。

火災保険の修繕方法としてカバー工法は対象外になることも

台風や強風などで屋根が被害を受けた際、火災保険を利用した修繕方法としてカバー工法が対象外となる可能性があります。火災保険は通常、建物を被害前の状態に戻すことを前提としているため、屋根の修繕方法として「葺き替え」が採用されるケースが多いのです。

【まとめ】カバー工法では信頼できる業者選びが重要

本記事では、屋根のカバー工法の特徴、メリット、デメリットを詳しく解説しました。カバー工法とは、既存の屋根に新しい屋根材を被せる施工方法です。しかし、この工法はすべての屋根に適用できるわけではなく、既存の屋根材によって施工の可否が変わります。

カバー工法の主なメリットは、葺き替えや葺き直しと比べて費用が抑えられ、工期も短いことです。一方で、建物への負荷が増加したり、屋根下地の状態が確認できないといったデメリットもあります。

この工法を選択する際は、以下の点に注意しましょう。

  1. 建物への負担を軽減するため、既存屋根より軽量の屋根材を選ぶこと。
  2. 建物の構造計算を必ず行うこと。
  3. 将来的な太陽光発電の設置や火災保険の利用についても考慮すること。

カバー工法には多くの注意点があるため、信頼できる業者選びが非常に重要です。屋根修理の匠では、全国の優良な屋根業者をご紹介しています。カバー工法を検討される際は、ぜひ一度ご覧ください。

優良屋根修理業者を探す

PAGE TOP

LINEでかんたん
問い合わせ&職人案内