雨漏りしやすい?やってはいけない屋根の形はあるの?

住宅の屋根にはさまざまな形状があり、デザインで決めている方も多いでしょう。

しかし、屋根の形は自由に設計できるものではありません。建築基準法によって制限があります。

そこで今回は、やってはいけない屋根の形について解説します。加えて、雨漏りしやすい屋根の特徴や屋根の形状についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

やってはいけない屋根の形とは

自分の家を建てる際、好きな形の屋根や憧れの屋根などさまざまなこだわりがあるはずです。しかし、屋根は自由に設計できる訳ではありません。

家を建てる際には建築基準法という法律があり、屋根の形状にも制限があります。その中で主に4つの注意すべき法規があります。

  1. 隣地斜線制限
  2. 絶対高さ制限
  3. 北側斜線制限
  4. 道路斜線制限

それぞれ解説します。

1.隣地斜線制限

隣地斜線制限とは、隣接する敷地の隣地境界線を起点として、高さと角度を定めた制限のことです。隣接する敷地の日当たりや通風・採光などを妨げないように、屋根の高さと形状を制限する法律です。

第一種・第二種低層住居専用地域では、後述する絶対高さ制限が設けられるため、隣地斜線制限は適用されません。

2.絶対高さ制限

絶対高さ制限とは、第一種・第二種低層住宅専用地域、田園住居地域においては、建物の高さが10メートルまたは12メートルまでに制限されることをいいます。

これは、低層住居の日照や通風などの環境を守るために設定されています。一部例外として、建物の敷地周辺に広い公園や広場、道路などがある場合、または学校など用途によってやむを得ないと特定行政庁が認可したものについては制限が緩和されます。

3.北側斜線制限

北側斜線制限とは、北側の道路または隣地側に面した建物の高さを制限することです。北側の隣地の日照を確保するためのものです。高さ制限と同様、第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域で制限されます。

さらに、第一種・第二種中高層住居専用地域においても適用されます。ただし、日影制限がある際は、第一種・第二種中高層住居専用地域には適用されません。

4.道路斜線制限

道路斜線制限とは、道路側に面した建物の高さを制限するものです。道路や周辺の建物の採光や通風が確保されるよう、道路に面している建物の一定部分の高さが制限されます。

道路斜線制限は、どの地域においても適用されるため、一般的に住宅が建てられる場所には必ず道路車線制限があります。

雨漏りしやすい屋根の特徴

ここでは、やってはいけない屋根の形以外に雨漏りしやすい屋根の特徴について解説します。雨漏りしやすい屋根の特徴は以下のとおりです。

・傾斜がゆるい屋根
・接合部が多い複合的な屋根
・軒がないまたは軒が短い屋根
・下屋根と外壁の取り合い部がある屋根

それぞれ解説します。

傾斜がゆるい屋根

傾斜がゆるいほど雨水はたまりやすくなります。傾斜がある屋根の場合は、高い場所から低い場所へ雨水が自然に流れるため排出できますが、傾斜がゆるい場合は流れにくくなります。

傾斜がゆるい屋根にも排水対策はされますが、傾斜がある屋根と比べると雨水がたまりやすくなってしまうため、雨漏りしやすくなってしまいます。

接合部が多い複合的な屋根

屋根に接合部分が多くなってしまうと雨漏りしやすくなります。屋根の接合部分には雨水の浸入を防ぐために、棟や谷樋板金などの「役物(やくもの)」を設置します。

しかし、棟や谷樋板金は金属製のものが多く使用されるため、経年劣化によるサビや穴あき、飛来物による破損によって隙間があいてしまうため雨漏りのリスクが高くなります。

軒がないまたは軒が短い屋根

軒がない、または軒が短い屋根は軒ゼロともいいます。軒ゼロ住宅は、キューブ型住宅とも呼ばれ、1,000万円代など低価格帯から購入できるとあって人気の住宅です。

しかし、屋根に軒がない、または少ないことで雨が直接外壁にあたります。外壁に直接あたることで、接合部分などのシーリングも劣化しやすくなります。

外壁やシーリングを定期的にメンテナンスしないと、劣化が進み雨漏りにつながります。

下屋根と外壁の取り合い部がある屋根

下屋根(げやね)とは、建物の1階部分にある屋根のことをいいます。外壁と屋根の接合部分を取り合いといい、取り合い部分には雨押え板金と呼ばれる隙間を埋めるカバーをします。

雨押え板金は時間が経つと固定しているネジやビスの浮きや抜けが生じてしまうため、雨漏りしやすくなります。

雨漏りしやすい形状の屋根

前章で雨漏りしやすい屋根の特徴について解説しました。ここでは、具体的に雨漏りしやすい形状の屋根はどのようなものがあるのかご紹介します。

雨漏りしやすい形状の屋根は以下のものがあります。

・陸屋根
・片流れ屋根
・入母屋屋根
・差し掛け屋根

それぞれ解説します。

陸屋根

陸屋根(りくやね・ろくやね)はもっとも雨漏りしやすい屋根の一つです。平らな形状でほとんど傾斜がない屋根です。

スタイリッシュな形状や屋根を屋上として利用できることから、近年人気の屋根の形状です。ほかにも屋根のメンテナンスが楽な点や、屋根裏がないことで天井が高く取れること、室内空間を広く取れるメリットがあります。

陸屋根は、たまった雨水を排水溝へ促すようわずかに傾斜が付いていますが、通常の傾斜がある屋根に比べてしまうと雨水がたまりやすく雨漏りにつながりやすい屋根といえます。

片流れ屋根

片流れ屋根とは、屋根の一方のみ傾斜がある屋根のことです。おしゃれなデザインや太陽光パネルも設置しやすいことから人気の屋根の一つです。

片流れ屋根は片方のみの傾斜のため、雨樋に雨水やゴミがたまりやすくなります。雨樋にゴミがたまってしまうと、雨水を正しく処理できなくなるため、雨漏りにつながりやすくなります。

また、傾斜の反対側は軒がない、または短いため、雨や紫外線が外壁にあたる部分が多くなります。雨や紫外線を防ぐ軒がないことで、外壁やシーリング、外壁と屋根の接合部分にも負担が大きくなるため劣化しやすくなるデメリットもあります。

入母屋屋根

入母屋(いりもや)屋根は、寄棟屋根の上に三角形の接妻屋根が乗ったような形状の屋根です。昔の瓦屋根住宅でよく見られた屋根です。

格式高い形状から神社仏閣などでも採用されています。屋根裏の通気性を確保しやすいメリットがある一方で、複雑な形状をした屋根のため、接合部分が多くなり雨水が浸入しやすく、雨漏りが起こりやすい屋根です。

差し掛け屋根

差し掛け屋根とは、片流れ屋根を段違いに設置したような形状をした屋根です。屋根の高さを段違いにすることで、耐風性が高まり屋根への負担が軽くなります。

加えて、片側の室内空間も広くなるため、ロフトや収納部分を広く取れるのがメリットです。しかし、段違いにすることで外壁との接合部分も増えるため雨水がたまりやすく、雨漏りのリスクも高まります。

雨漏りに強い屋根の形状

では、雨漏りに強い屋根とは、どのような形状をした屋根なのでしょうか。

それは、「切妻屋根」です。切妻屋根は2枚の屋根材を左右対称に配置するため三角屋根とも呼ばれ、昔からある一般的な屋根です。

単純な形状から水はけがよく雨漏りのリスクが少ない屋根といわれています。コストも安く済むのもメリットです。

ただし、個性を出しづらかったり、屋根で覆われていない妻側部分に紫外線や雨があたりやすいため、劣化しやすくなります。予算を抑えて、雨漏りしにくい屋根にしたい人にはおすすめの屋根です。

雨漏りが発生しやすい屋根の箇所

ここでは、雨漏りしやすい屋根の形状以外にも、雨漏りが発生しやすい箇所について少し深堀りしていきます。

雨漏りが発生しやすい屋根の箇所は以下になります。

・谷樋板金(谷板金)
・屋根材を固定するクギ穴
・屋根と外壁の取り合い部分
・雨樋や排水溝
・太陽光パネルの設置部分

それぞれ解説します。

谷樋板金(谷板金)

谷樋板金(または谷板金)の設置部分から雨漏りが発生しやすいです。谷樋板金は複合屋根や入母屋屋根など、複雑な形状の屋根の谷にあたる部分に設ける役物です。

屋根材と屋根材が重なる部分は隙間が発生するため、谷樋板金を設置して雨水の浸入を防ぎます。谷樋板金は金属製が多いため、サビによる穴あきで雨漏りにつながる場合があります。

屋根材を固定するクギ穴

屋根材や谷樋板金、棟板金などを固定する際、クギやビスが使われます。経年劣化によって、固定しているクギやビスが緩んでくるため隙間から雨水が入り込みます。

台風や強風時はクギやビスが緩みやすくなるため、点検の際はきちんと診てもらうようにしましょう。

屋根と外壁の取り合い部分

複合的な屋根の場合、屋根と外壁の接合部分にあたる取り合い部分に隙間ができやすくなります。接合部分には雨押え板金などの役物を設置して、シーリングを充填して隙間を埋めています。

しかし、経年劣化によってシーリングにひび割れなどが生じると、隙間から雨水が浸入し雨漏りにつながります。

雨樋や排水溝

雨樋や排水溝は落ち葉やゴミなどが詰まりやすい場所です。ゴミが詰まることで、正しく排水できなくなるため、水の流れが変わり、外壁などを伝って雨漏りにつながることがあります。

台風や強風時はゴミが飛散してくる場合もあるため、定期的に掃除をして詰まらないようにしておく必要があります。

太陽光パネルの設置部分

太陽光パネルを設置する場合、屋根材に穴をあけて取り付ける場合があります。穴をあけて固定したクギやネジ穴から雨水が浸入して、雨漏りにつながることがあります。

太陽光パネルによっては、屋根材に穴をあけずに設置できるアタッチメントが用意されている製品もあるため、雨漏りが心配な場合は、アタッチメントがある製品を選ぶようにしましょう。

屋根の形状を変更する場合のリフォームにかかる費用

コスト

雨漏りに不安がある場合、屋根の形状や勾配を変えることができます。

屋根をリフォームしたいと考えた場合、どの程度費用がかかるのか気になりますよね。ここでは、屋根の形状を変更する場合のリフォームにかかる費用について解説します。主な費用は以下のとおりです。

雨漏りのリスクが少ない屋根への変更として、

・切妻屋根へ変更の場合:300〜600万円程度
・寄棟屋根への変更の場合:400〜700万円程度

屋根の形状を変更する以外にも、屋根の勾配を変えて雨水の排水方法を変更する場合もあります。その際の費用相場は、200〜600万円程度です。

上記費用は、屋根の規模や施工する業者によっても費用は異なります。また、上記以外にも足場代15〜20万円程度かかります。

雨漏りを防ぐメンテナンス方法

雨漏りしやすい屋根でも、しっかりとメンテナンスをすれば雨漏りを防ぐことはできます。ここでは、雨漏りを防ぐメンテナンスについて解説します。

・雨樋や排水溝を日常的に清掃する
・塗装メンテナンスを早めに行う
・葺き替え工事でリフォームする

それぞれ解説します。

雨樋や排水溝を日常的に清掃する

雨漏りを防ぐには、やはり日常的に清掃することが大切です。雨樋や排水溝はゴミがたまりやすい場所です。手が届く範囲の場所に排水溝があれば、定期的に掃除してあげましょう。

雨樋は高所にあるため、なかなか日常的に掃除は厳しいと思います。雨樋を掃除するために、屋根に登ったりはしごで登ったりするのは転落の危険があるためやめましょう。屋根や外壁の点検の際には、業者へお願いして掃除してもらうことをおすすめします。

塗装メンテナンスを早めに行う

屋根には防水性を高めるために塗装が必要です。塗装が劣化すると、汚れや色あせが目立つようになり、防水効果も落ちてきます。塗装の劣化を放置すると、雨水がたまりやすくなり、屋根材にも染み込んでいきます。

雨漏りにもつながってしまうため、上記の劣化症状が見られたら、早めに塗装メンテナンスを行うようにしましょう。

葺き替え工事でリフォームする

雨漏りを防ぐには葺き替え工事でリフォームしてしまうのも一つです。葺き替え工事となると高額な費用がかかりますが、雨漏りの心配がなくなります。すでに屋根が原因で雨漏りしている場合は雨漏りの根本的な解決になります。

ガルバリウム鋼板などの金属屋根に変えることで、軽量になるため耐震性の強化にもなり、耐久性も30年程度と長いためメンテナンスにかかる手間も少なくなります。

まとめ

今回は、やってはいけない屋根の形や雨漏りしやすい屋根の特徴や種類について解説しました。

やってはいけない屋根の形は、以下の制限に該当する屋根です。

・隣地斜線制限
・絶対高さ制限
・北側斜線制限
・道路斜線制限

屋根の形は自由に設計できるものではありません。隣家や道路の日当たりや通気を妨げないようにさまざまな制約が建築基準法に則って制限されているため注意が必要です。

また、雨漏りしやすい屋根の特徴としては以下があります。

・傾斜がゆるい屋根
・接合部が多い複合的な屋根
・軒がないまたは軒が短い屋根
・下屋根と外壁の取り合い部がある屋根

複雑な形状をすればするほど雨漏りのリスクが高まります。

雨漏りのリスクが低い屋根は三角屋根とも呼ばれる「切妻屋根」です。シンプルな形状が雨漏りのリスクを低減してくれます。

しかし、どの屋根でも雨漏りのリスクはあります。定期的なメンテナンスが雨漏りを防止することにつながります。

雨漏りを防水するメンテナンスは、屋根修理専門業者へ依頼するようにしましょう。屋根修理専門業者を選ぶ際は「屋根修理の匠」がおすすめです。屋根修理の匠は、優良業者をランキング形式で検索できる情報ポータルサイトです。

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