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トタン屋根は「施工しやすい」「コストが安い」といった特徴があり、以前まで住宅や倉庫など多くの建物で採用されていました。今もなお、トタン屋根を使った建物を目にすることは多いでしょう。
一方で、トタン屋根は「錆びやすい」「他の屋根材と比較して機能性が低い」といったデメリットがあるため、扱いには注意が必要となります。
そこで今回は、トタン屋根の特徴やメリット、デメリットについて詳しく解説していきます。合わせて、トタン屋根における状態別の適切なメンテナンス方法も紹介します。
「トタン屋根の適切なメンテナンス方法を知りたい」「トタン屋根と他の屋根材の違いを知りたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
トタン屋根とは、薄い鉄板に亜鉛メッキを施した「トタン板」を使用した屋根材のことです。トタン屋根の歴史は明治時代からはじまり、現在でも多くの建物で使用されています。
トタン屋根といえば、平らな形状や波板状の金属屋根をイメージする方が多いのではないでしょうか。ここからは、トタン屋の種類や特徴について紹介します。
トタン屋根は、次の3つに大別されます。
・波板トタン屋根
・瓦棒葺きトタン屋根
・折板トタン屋根
それぞれ詳しく見ていきましょう。
波板トタン屋根とは、その名の通りトタン板を波板状に加工して施工した屋根のことです。トタン屋根といえば、この波板トタン屋根をイメージする方が多いでしょう。トタン板を波板状に加工している理由は、薄い屋根材を補強する効果があるためです。
〈施工例〉
瓦棒葺きトタン屋根とは、屋根の縦方向(傾斜が下がる方向)に桟を設置して、その桟にひっかけるようにしてトタン板を敷いた屋根のことです。設置した桟の名称を「瓦棒」と呼ぶため、「瓦棒葺きトタン屋根」と名付けられています。一寸勾配の緩やかな屋根で施工できるのも特徴です。
〈施工例〉
折板トタン屋根とは、角ばるように曲げて加工されたトタン板を使用している屋根のことです。トタン板のカーブした部分は「台形」に加工されていて、波板トタン屋根と同様、屋根材の補強効果を期待できます。倉庫や工場などの大きな建物に採用されることが多く、勾配のない屋根にも使用可能です。
〈施工例〉
トタン屋根は、これまで日本の住宅を支えてきた優れた屋根材です。価格や施工などのあらゆる観点から、メリットを探ってみましょう。
トタン屋根のメリットは次の4つです。
・価格が安い
・軽量で耐震性が高い
・雨漏りしづらい
・勾配がない屋根にも採用できる
順に掘り下げていきます。
トタン屋根の価格は、他の屋根材と比べて安い点が大きなメリットです。実際に、代表的な屋根材の価格と比べてみましょう。
屋根材 | 価格(材工含む) |
トタン | 5,000円〜6,000円/㎡ |
ガルバリウム鋼板 | 6,000円〜9,000円/㎡ |
化粧スレート | 4,500円〜8,000円/㎡ |
粘土瓦 | 9,000円〜12,000円/㎡ |
屋根材自体の価格が安いため、新築時の工事と合わせてメンテナンス費用も抑えることが可能です。また、トタン屋根は他の屋根材と比較して施工方法が簡単であるため、工期が短く工事費用も安くなります。
トタン屋根は、薄い鉄板を加工して作られた屋根材なので、軽量であることが強みです。屋根瓦と比べて、トタン屋根の重量は10分の1といわれています。
建物にかかる負荷が少ないと、耐震性の向上につながり地震に強い家づくりが実現します。
トタン屋根は、比較的大きな金属板を張り合わせて施工するので、継ぎ目が少なく雨漏りしづらい構造が特徴です。積雪が多い地域では、雪解け水が溜まっても雨漏りの心配が少ないので、多くの住宅で採用されています。
瓦屋根やスレート屋根の施工は、勾配屋根のみ可能となりますが、一方のトタン屋根は、勾配がない平らな屋根で施工しても問題ありません。雨漏りや積雪に強いトタン屋根は、勾配にとらわれない高い汎用性が評価されています。
トタン屋根は性質上のデメリットが多く、他の屋根材と比較して劣る部分が際立つ印象です。生活に影響するデメリットもいくつかあるので、それぞれ理解しておきましょう。
屋根材の表面に施された亜鉛が剥がれると、素材の鉄板が露出して錆が発生します。錆が発生した箇所を放置すると屋根材に穴が空き、全体の強度が下がります。したがって錆が発生する前に、定期的に塗り替えることが不可欠です。
また、錆の発生は素材の性質自体が要因となるほか、勾配がない屋根の水はけの悪さも原因として考えられるでしょう。
トタン屋根は薄い鉄板を使用しているため熱伝導率が高く、トタン屋根の表面温度が室内に伝わりやすくなります。断熱性能はほとんどないので、夏場における室内温度の上昇には要注意です。
室内温度の上昇を防ぐためには、屋根裏に断熱材を多く設置したり、屋根に遮熱塗料を塗ったりするなどの工夫が必要となるでしょう。
前述のとおり、トタン屋根は薄い鉄板を使用した屋根材であるため、断熱性のみならず防音性もほとんどありません。そのため、雨音が室内に響きやすいのがネックとなります。また、屋根の上にいるカラスの足音も聞こえることも。
もし、屋根の雨音や騒音が気になる場合は、屋根の下に遮音効果をもつシートを設置するのもひとつです。
トタン屋根は昔ながらのイメージがあり、重厚感に欠けてしまうのがデメリット。また瓦屋根と比較して、トタン屋根はのっぺりした印象を持たれるため、安っぽく見えてしまうでしょう。
トタン屋根の耐用年数は「10年〜20年」といわれています。しかし、10年〜20年という年数は他の屋根材に比べると短く、早めに屋根材を交換する必要があります。
実際に、トタン屋根と他の屋根材との耐用年数を比較してみましょう。
屋根材 | 耐用年数 |
トタン | 10年〜20年 |
瓦屋根 | 30年〜100年(種類による) |
スレート | 20年〜30年 |
ガルバリウム鋼板 | 20年〜30年 |
上記の耐用年数は、メンテナンスの有無や立地の違いにより、縮まる可能性が十分に考えられます。また、トタン屋根の頂上にある「棟板金」は傷みの進行が著しく、耐用年数よりも早い段階で交換が必要になるケースもあります。
トタン屋根は、定期的なメンテナンスを行わなければならないことに加え、他の屋根材よりも早い段階で耐用年数を迎えてしまうことを心得ておきましょう。
トタン屋根の耐用年数は、10年〜20年であるとわかりました。しかし、トタン屋根のメンテナンスは「耐用年数を迎えるまでの期間」と「耐用年数が近づいたタイミング」で適切な方法が異なります。
ここからは、トタン屋根における状態別のメンテナンス方法を解説します。合わせて適切なタイミングも紹介するので、屋根材をきれいに保つためにもしっかり把握しておきましょう。
トタン屋根は、物が当たった衝撃で表面が剥がれたり、一部が捲れ上がったりするケースがあります。たとえば、台風による飛来物が屋根に直撃し、屋根材の一部が欠けることも。
屋根材の一部が破損したり剥がれたりすると、錆が発生する要因になるので早期の補修が必須です。「屋根材全体を補修する必要はないが、一部だけ修理したい」といった際は、部分補修を依頼しましょう。
ただし、すでに重度の錆が発生している場合や、ノーメンテナンスの状態で10年以上経過している場合は、次に紹介する塗装や葺き替えによるメンテナンスを検討しましょう。
補足ですが、屋根の勾配や構造によっては部分補修でも足場が必要なケースもあるので、依頼する業者に確認しましょう。
トタン屋根を耐用年数まで維持するためには、塗装によるメンテナンスが効果的です。塗装時期の目安は7年〜10年ではあるものの、屋根材が色あせてきた頃が塗装のベストタイミングだと認識しておきましょう。
一方で、軽微な錆が発生しているタイミングでも塗装による効果はあります。しかし、錆が発生する前に塗り替えしなければ、屋根材の寿命を縮めてしまうため、早めのメンテナンスを心がけましょう。
ちなみに、塗装は使う塗料によって耐用年数が異なります。以下に、塗料別の耐用年数を紹介するので参考にしてください。
塗料 | 耐用年数 |
ウレタン | 8年〜10年 |
シリコン | 13年〜15年 |
フッ素 | 15年〜20年 |
ここで注意しておきたいのは、10年目の塗装でどの塗料を選ぶかということです。トタン屋根の寿命が10年〜20年であるため、仮に10年目で「フッ素」を選んだ場合、効果を最大限に発揮できないまま屋根を交換しなければなりません。したがって、屋根材の寿命を加味したうえで塗料を選定しましょう。
また、遮熱性を上げる機能がある塗料や、汚れを落とす効果がある塗料もあるので、必要な機能を基準に選んでも良いでしょう。
屋根材の傷みが著しく、強度を保てない場合は「葺き替え」を行いましょう。葺き替えとは既存の屋根材を剥がし、下地材を交換・補修したうえで新しい屋根に交換する工法のことです。
トタン屋根の耐用年数に近づいたタイミングや、屋根材のメンテナンスを10年以上せず劣化が著しい場合は、葺き替えによるメンテナンスが適切です。
新しく採用する屋根材に関しては、トタン屋根のような軽量設計された屋根材を選ぶことをおすすめします。理由は、既存の屋根がトタン屋根の場合、軽量化された屋根材の使用を想定して建物を設計している可能性が高いためです。たとえば、軽量で耐用年数が長い「ガルバリウム鋼板」は、多くの住宅で普及している定番商材なので、選んでおけば間違いないでしょう。
屋根材に重度の錆があったり、穴が空いていたりした場合は「カバー工法」を検討しましょう。カバー工法とは既存の屋根材の上に防水シートを敷き、その上に新しい屋根材を被せる工法のことです。
既存屋根の上に敷くシートには、遮熱性を上げたり防音性を高めたりするタイプがあります。そのため、カバー工法は屋根の劣化を防ぐだけでなく、住宅の快適性を向上させる役割も果たすといえます。
一方で、上に被せる屋根材に耐用年数が長いものを選べば、数十年間は耐久性を維持することが可能です。また葺き替えと同様、新しい屋根材の選定は建物の強度を考慮する必要があるため、軽量設計された「ガルバリウム鋼板」を選ぶと良いでしょう。
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トタン屋根におけるメンテナンス費用の相場は、以下のとおりです。ただし、屋根の広さや劣化の進行具合によって金額は変動します。
部分補修 | 3万円〜(足場代を除く) |
塗装 | 50万円前後 |
葺き替え | 110万円〜200万円 |
カバー工法 | 100万円前後 |
部分補修は足場を不要とする場合がほとんどですが、場合によっては足場を要するケースも。足場を組む場合は、足場代が追加で発生するため注意してください。
塗装に関しては、使う塗料によって費用が変動します。また、塗装工事の場合は足場を組む必要があるので、同時に外壁塗装も検討すると良いでしょう。
一方、葺き替えに関しては、新しく採用する屋根材によって金額が大きく変わります。新しい屋根にもトタン屋根を採用した場合、費用を抑えることができますが、耐用年数や機能性を考えると得策ではありません。
カバー工法も同様に、選ぶ屋根材によって金額が変動します。なお、既存の屋根材を撤去する費用がかからないため、トータルコストを抑えられるのはポイントです。
「葺き替えやカバー工法を検討しているものの、新しい屋根材の選び方がわからない」と悩んでいるなら、トタン屋根の価格とそこまで変わらないものの、機能性が向上し耐用年数が長くなった「ガルバリウム鋼板」を選んでおけば間違いないでしょう。
トタン屋根を使う際は、いくつか注意するべき点があります。「トタン屋根の使用を検討している」「トタン屋根をメンテナンスする予定がある」という方は、あらかじめチェックしておきましょう。
トタン屋根の素材は薄い鉄板であるため、耐久性や防水性の低さがネックとなります。また、錆が発生しやすいこともあり、他の屋根材と比べてメンテナンス頻度が多いのもデメリット。
トタン屋根は比較的耐用年数が短く、メンテナンスサイクルの間隔がせまいので「屋根材の価格が安い」という理由だけで決めるのは好ましくありません。
長期的な目で見ると、トタン屋根におけるメンテナンスのトータルコストは、他の屋根材と比較して高くなる場合もあります。したがってトタン屋根を採用する際は、長期的なランニングコストも視野に入れましょう。
今から30〜40年前、トタン屋根は屋根材の主力商材として、多くの住宅で普及していました。しかし、トタン屋根よりも耐久性に優れた「ガルバリウム鋼板」の普及によって、トタン屋根を採用する住宅や建物は減り、トタン屋根の優位性が徐々に失われたという経緯があります。
ガルバリウム鋼板はトタン屋根と比べて耐久性が向上し、価格もさほど変わらないことから、あえてトタン屋根を使うケースは少なくなったといえるでしょう。
業者によって人件費や使う機材、実績が異なるため、費用にもバラつきが出ます。そのため、トタン屋根のメンテナンスを依頼する場合は、複数の業者から見積もりをもらうようにしましょう。
たとえば、A社から見積もりをもらい、その見積もりをB社に提示して価格の交渉をする「相見積もり」は、費用を抑えるのに有効です。
良質な施工業者を見つけるためにも、複数の業者を比較せずに依頼する業者を判断するのは避けましょう。
今回は、トタン屋根の特徴やメリット、デメリットを詳しく解説しました。トタン屋根は、他の屋根材と比較して価格が安いほか、軽量なので建物への負担が少ないといったメリットがあります。
ただし、屋根材の耐用年数は比較的短く、塗装や葺き替えなどの定期的なメンテナンスが短いスパンで必要となります。また、後発の「ガルバリウム鋼板」の普及により、トタン屋根の優位性が失われていることは間違いありません。トタン屋根を使用するなら「耐用年数」や「機能性のデメリット」を踏まえたうえで慎重に判断しましょう。
メンテナンスを検討する際は、プロに相談して適切な方法やタイミングを知ることが重要です。屋根修理の匠では、各都道府県の優良屋根修理業者を探すことができるので「業者選びに不安がある」「メンテナンスのタイミングがわからない」という方はぜひ活用してみてください。
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