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屋根の形には様々な種類がありますが、「寄棟屋根」という言葉を聞いて、具体的なイメージが浮かぶでしょうか。
実は、ご自身の家が寄棟屋根であっても、その構造や特徴をよく理解していない方が多くいらっしゃいます。
この記事では、寄棟屋根の他の屋根との違い、導入する際のメリット・デメリット、そして維持管理にかかる費用について詳しくご説明いたします。
寄棟屋根についての正しい知識を身につけて、適切なメンテナンス計画を立てましょう。
寄棟屋根とは、切妻屋根や片流れ屋根などと同様に、勾配屋根のひとつに分類される屋根のことをいいます。
屋根形状が特徴的で、屋根の棟包みから軒樋に向かって四方向に傾斜面のある屋根となっています。
住宅の屋根として採用されることが多く、その意匠性の高さから世界的に高い人気を誇っています。
しかしその複雑な屋根形状から、ほかの屋根に比べてメンテナンス費用がかかるため、計画的かつ適切なメンテナンスが必要になります。
住宅に採用される勾配屋根には、寄棟屋根と異なる形状の屋根があります。
ここでは、以下の勾配屋根について、寄棟屋根とのちがいを解説していきます。
・切妻屋根
・片流れ屋根
それでは、個々の勾配屋根について寄棟屋根とのちがいを見ていきましょう。
切妻屋根とは、屋根の棟包みから軒樋に向かって二方向に傾斜面のある山型の形状をした勾配屋根のことをいいます。
日本においては、多くの住宅で切妻屋根が採用されており、シンプルな形状から寄棟屋根に比べて屋根のメンテナンス費用や雨漏りのリスクを抑えることができます。
片流れ屋根は、一方向のみに傾斜がある独特の屋根形状で、建物の一側面から反対側に向かって緩やかに傾斜していきます。
都市部の狭小地や住宅密集地でも建てやすく、建物間の空間を有効活用できる特徴があります。
モダンでシンプルなデザインが特徴的で、コンパクトな住まいを求める若年層から支持を集めています。また、寄棟屋根と比較すると維持費を抑えられる点も魅力の一つです。
重厚感のある外観に注目が集まる寄棟屋根には、多くのメリットがあります。
そこでここでは、寄棟屋根のメリットについて解説します。
寄棟屋根のメリットは、以下の4つです。
・耐風性の高さ
・意匠性の高さ
・屋根の表面にある雨や雪を分散できる
・北側斜線制限への適合性
ひとつずつ簡単に解説していきます。
寄棟屋根は4つの傾斜面を持つ構造により、風の影響を受けにくく優れた耐風性を備えています。
このため、強風地域や台風の多い地域でも建物への被害を抑制でき、結果として通常の勾配屋根と比較してメンテナンスの頻度を
少なくすることが可能です。
四方向に屋根の傾斜面を持つ寄棟屋根は、その高い意匠性から重厚感のある住宅を演出します。
和洋どちらの住宅にも合うデザインで、その汎用性が高いことも特徴のひとつになっています。
寄棟屋根は四方向への傾斜により、屋根表面の雨水や積雪を効率的に排水できる構造となっています。
屋根表面に水分が長期間滞留すると、屋根材の劣化を加速させ、建物内部への浸水リスクが高まることがあります。このような水の浸入は、建物の構造に深刻なダメージを与え、耐用年数を大幅に縮める可能性があります。
しかし寄棟屋根は、その独特な形状により自然な排水を促進するため、水による損傷のリスクを最小限に抑えることができます。
寄棟屋根は、屋根の高さを抑えた設計が特徴的で、これにより建築基準法で定められた北側斜線制限をクリアしやすい構造となっています。
密集した住宅地域において、寄棟屋根を採用することで、建築基準法における北側斜線制限や隣地斜線制限といった規制に柔軟に対応できる利点があります。
寄棟屋根の特徴を理解するにあたり、デメリットについても検討する必要があります。
以下では、寄棟屋根を導入する際に考慮すべき主な課題点について詳しく説明していきます。
具体的には、以下の4つの点に注目して解説を進めていきます。
・メンテナンスコストがかかる
・屋根裏に十分なスペースが確保できない
・大容量の太陽光発電を設置できない
・雨漏りのリスクが高い
それでは、個々のデメリットを見ていきましょう。
寄棟屋根は屋根形状が複雑なため、ほかの勾配屋根に比べて屋根のメンテナンスにコストがかかってしまいます。
寄棟屋根は屋根が四面あるため、ほかの勾配屋根に比べて屋根面の接続部に多くの部材が使用されています。
屋根塗装や屋根の葺き替えといったメンテナンスする際には、このような接続部における部材の数が、メンテナンスコストに大きく影響を及ぼします。
これらのことから、寄棟屋根は効率よく計画的にメンテナンスする必要があると言えるでしょう。
ほかの勾配屋根に比べて屋根自体に高さのない寄棟屋根では、北側斜線制限などに有利な反面、屋根裏に十分なスペースが確保できないというデメリットがあります。
屋根裏におけるスペースの広さは、換気効率の良さに直結します。
つまり、寄棟屋根では屋根裏に熱気や湿気がこもりやすくなるため、換気効率を上げる施策が必要になります。
たとえば、屋根の棟包みや軒天部分に換気口を設けるなどの工夫が必要になります。
4つの屋根面を持つ寄棟屋根には、大容量の太陽光発電は設置できません。
なぜなら、寄棟屋根の各屋根面は台形もしくは三角形の形状をしており、屋根面いっぱいに太陽光パネルを設置できないからです。
東面、南面、西面と3つの屋根面に太陽光パネルを設置できるため、一見太陽光発電に適していると思われがちですが、個々の屋根面に設置できる太陽光パネルの容量はそこまで多くありません。
太陽光発電の設置を前提に勾配屋根を検討するのなら、切妻屋根や片流れ屋根を選択するようにしましょう。
寄棟屋根は、四方の屋根面が交わる接合部が多いため、他のタイプと比較して雨漏りが発生しやすい構造となっています。
このリスクは特に沿岸部など、塩分を含んだ空気にさらされる地域で顕著です。そのため、こうした環境では通常以上に頻繁な点検と早めの予防的メンテナンスを心がける必要があります。
寄棟屋根は、ほかの勾配屋根に比べてメンテナンス費用が高くなる傾向があります。
そのため、寄棟屋根をメンテナンスする際には、屋根全体の劣化状況や今後の住まい方などを考慮して、適切なメンテナンス方法を選択しなければなりません。
そこでここでは、寄棟屋根のメンテナンス方法やその費用について解説します。
寄棟屋根のメンテナンス方法には、大きく以下の3つがあります。
・部分補修
・塗り替え
・屋根の葺き替え
それでは、順に見ていきましょう。
寄棟屋根の部分的な修繕作業の内容や修理費用は、どの程度の損傷があるか、また具体的な破損箇所によって変わってきます。
一般的に実施される寄棟屋根の部分修繕には、次のような種類があります。
・樋の清掃
・部分的な屋根材の補修/交換
・部分的な棟板金の補修/交換
・部分的な棟瓦や漆喰の補修
各補修内容におけるメンテナンス費用の目安は、以下のとおりです。
部分補修の内容 | メンテナンス費用の目安 |
---|---|
樋の清掃 | 1〜5万円 |
部分的な屋根材の補修・交換 | 3〜10万円 |
部分的な棟板金の補修・交換 | 5〜50万円 |
部分的な棟瓦や漆喰の補修 | 10〜50万円 |
なお、部分補修の作業内容によっては、別途仮設足場の費用が加算されることがあります。
寄棟屋根を塗り替える際には、以下のような塗料を使用するのが一般的です。
・ウレタン塗料
・シリコン塗料
・フッ素塗料
これらの塗料はそれぞれ目安となる耐用年数が異なり、耐用年数の長さに比例して費用も高くなっていきます。
そのため、塗料の選定においては、塗り替えの予算や屋根のメンテナンスサイクル、さらには今後の住まい方も視野に入れることがポイントになります。
寄棟屋根の塗り替えにおけるメンテナンス費用の目安は、以下のとおりです。
塗料の種類 | 1㎡あたりのメンテナンス費用の目安 |
---|---|
ウレタン塗料 | 2,000~3,000円 |
シリコン塗料 | 3,000~4.500円 |
フッ素塗料 | 3,500~5,500円 |
なお実際の工事では、上記金額に別途仮設足場の費用が加算されます。
屋根材の劣化が進行していたり、雨漏りによって構造体に損傷が生じた場合は、屋根の全面的な葺き替え工事を検討する必要があります。
葺き替え工事では屋根材を完全に撤去し、ルーフィングシートなどの下地材も新しいものに交換することで、防水性能を大幅に向上させることができます。
これにより、屋根全体を竣工時と同等の性能まで回復させることが可能です。
寄棟屋根の葺き替えに関しては、選択する屋根材の種類によって工事費用が以下のように変動します。
屋根材の種類(施工費:含) | 1㎡あたりのメンテナンス費用の目安 |
---|---|
スレート屋根 | 4,500〜7,000円 |
ガルバリウム鋼板 | 6,500〜9,000円 |
陶器瓦・洋瓦 | 8,000〜15,000円 |
なお実際の工事では、上記金額に別途仮設足場の費用が加算されます。
今回は、寄棟屋根とほかの勾配屋根のちがいやメリット・デメリット、メンテナンスにかかる費用などを解説しました。
寄棟屋根とは、切妻屋根や片流れ屋根などと同様に、勾配屋根のひとつに分類される屋根のこと。ほかの勾配屋根に比べて屋根形状が複雑で、その高い意匠性が多くの住宅で評価されています。
しかしその一方、メンテナンスにかかるコストが割高というデメリットがあるため、寄棟屋根は適切な時期に適切な方法でメンテナンスしなければなりません。
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