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屋根工事を行う際に、見逃してはならない重要なポイントの一つとしてアスベストの存在確認が挙げられます。
アスベストは、かつて多くの建築材料にしようされていたため、古い建物ではその存在が懸念されます。
特に、屋根工事ではアスベストの事前調査報告が義務づけられているため、避けて通ることはできません。
この記事では、屋根工事におけるアスベスト事前調査の報告義務について、具体的な手順や法的な要件を詳しくご紹介します。
屋根工事をスムーズに進めるためにも、ぜひ参考にしてください。
アスベストとは、石綿とも呼ばれる微細な鉱物です。蚊紋石族・角閃石族に分類され、以下の6種類があります。
石綿の種類 | 特徴 |
---|---|
白石綿(クリソタイル) | 世界で使用された石綿の9割以上を占める種類。石綿製品の多くの原料として使用されていた。 |
青石綿(クロシドライト) | 石綿セメント高圧館などで使用されていた種類。 |
茶石綿(アモサイト) | 断熱保温剤として使用されていた種類。 |
アンソフィライト石綿 トレモライト石綿 アクチノライト石綿 |
蛭石などの不純物に含まれる種類。吹付けの石綿として使用されていたものもある。 |
アスベストは高い耐火性・断熱性に優れており、酸やアルカリにも強い耐性を持っているのが特徴です。さらに、加工しやすく丈夫といった特性もあるため、多くの工業製品や建築材に利用されていました。
耐久性に優れたアスベストですが、現在では、人体に悪影響を及ぼすことが分かり、2006年の法改正で全面的に使用禁止となりました。
以下は、アスベストが原因で発症する可能性がある病気です。
発症する可能性がある病気 | 症状 |
---|---|
石綿肺症(アスベスト症) | 肺線維症の一つで、肺が線維化する。石綿や粉じんなどが原因として発症し。アスベストを10年以上吸入した作業者に起こるとされている。潜伏期間は15年~20年。 |
肺がん | 胚細胞が石綿の繊維を取り込むことによる物理的な刺激で肺がんが発症するとされている。潜伏期間は15年~40年。 |
悪性中皮腫 | 胸膜、腹膜、心膜等にできる悪性の腫瘍。若い時期にアスベストを吸い込んだ方が発症しやすいとされている。潜伏期間は20~50年。 |
このように、アスベストは人体への悪影響を及ぼすことが分かっており、現在は使用が禁止されています。すでにアスベストが使われている建材については、飛散防止対策を行うなど細心の注意が求められています。
アスベストには、危険度がレベル1から3まで設定されています。
危険度 | 使用製品 | 飛散する可能性 | 処理方法 |
---|---|---|---|
レベル1 | 吹き付け材 | 非常に高い | 周囲を隔離する厳重な処理 |
レベル2 | 断熱材 | 高い | 周辺を隔離する厳重な処理 |
レベル3 | 屋根材 | 粉砕や切断時は高い | 隔離する必要はないが湿らせて処理 |
危険度はレベル1が最も危険で、レベル3が比較的低くなります。
屋根材についてはレベル3に分類されるため、アスベストを使用している建材の中でも危険性は低くなります。しかし、屋根工事などで粉砕や切断が行われる際には、適切な方法で処理する必要があります。
また、屋根工事だけでなく、劣化や損傷などにより表面が削れたり割れたりすると、アスベストが飛散する可能性が高くなります。
アスベストを含む屋根材を使用している場合は、屋根の不具合が見られたら速やかに専門業者に相談することをおすすめします。
アスベストを含有する建材は、2006年9月から製造・使用などが全面的に禁止されています。しかし、2006年9月以前に建築されている建物については、アスベスト含有建材が使用されている可能性が高いです。
そのため、2022年4月より改修工事や解体工事などを行う業者には、「アスベスト事前調査報告」が義務付けられました。これにより、工事中のアスベストの飛散を防ぎ、人体への影響を最小限に抑える対策が講じられることになります。
これまでは無資格でも一定規模以上の工事を行う際には業者が行っていた「アスベスト事前調査報告」ですが、2023年10月以降は厚生労働大臣の定める「建築物石綿含有建材調査者」という資格を持つ者が行わなくてはならなくなりました。
「建築物石綿含有建材調査者は」、以下の3つのうちいずれかの資格を有している者か、「日本アスベスト調査診断協会」に登録されている者です。
・一般建築石綿含有建材調査者(一般調査者)
・特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)
・一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者)
そのため、アスベスト事前調査を行う必要がある建物の改修工事や解体工事を行う際には、必ずこれらの資格を有する業者に依頼する必要があります。
ただし、アスベスト事前調査報告義務は工事を請け負う業者側の責任です。発注者側が特別に何かする必要はありませんので、その点は安心してください。
アスベストが人体に悪影響を及ぼすことは分かっていても、実際に自分が住んでいる家の建材にアスベストが使われているか分からないという方は多いでしょう。
そこで、屋根材にアスベストが含有されている可能性があるか、見分ける方法をご紹介します。
屋根材においては、2004年以前に製造された屋根材にはアスベストが含まれている可能性があります。アスベストに関する制限は、2004年と2006年に行われています。
まず、2004年の規制により、アスベストを1%以上含む建材の使用が禁止されました。これにより、屋根材についてはアスベストを使用することが事実上できなくなりました。
そのため、2004年の制限以降の屋根材については、アスベストを含んでいる可能性は低いといえるでしょう。ただし、2004年以前に建築された建物だからといって必ずしもアスベストを含んでいるわけではありません。あくまでも目安として考えてください。
2004年以前に建築されている建物でも、すべての屋根材にアスベストが含まれているわけではありません。アスベストを利用していた代表的な屋根材には、以下のようなものが挙げられます。
・住宅用屋根用スレート(平板・波板)
・スレート瓦
・セメント瓦
一方で、粘土瓦や金属屋根については、アスベストが含まれていません。ただし、アスベストが含まれていないと思われる建材でも、事前調査報告は必要になりますのでご注意ください。
また、屋根修理と同時に外壁工事を行われるケースが多いですが、外壁においても注意が必要です。以下の建材にはアスベストが含まれている可能性があります。
・窯業系サイディング
・軒天などのケイカルボードフレキシブルボード
・天井などの化粧石膏ボード
改修工事を行う際には、屋根と併せて調査が必要になると考えて良いでしょう。
アスベストを含んでいる可能性のある建物を改修・解体する場合に必要となるアスベスト事前調査報告ですが、すべての工事が対象になるわけではありません。
ここからは、アスベスト事前調査報告が必要な工事の種類をご紹介していきます。
解体部分の延べ床面積が80㎡以上の広さがある住宅や建築物の解体工事です。
この条件に該当する場合は、アスベスト事前調査報告義務が生じます。
住宅などの建築物を改造および改修するにあたり、請負金額が税込で100万円以上かかる改修工事には、アスベスト事前調査報告義務が生じます。
請負金額の内訳は、材料費を含めた作業全体の金額であり、事前調査費用については含まれません。また、請負契約が交わされていない場合でも、業者に施工を依頼する際は適正な請負金額の相当額で判断されます。
ボイラー、煙突、焼却設備などある特定の工作物の解体工事や改修工事を行うにあたり、請負金額が100万円以上かかる場合に、アスベスト事前調査報告義務が生じます。
こちらも建築物の改修工事同様、請負金額の内訳は、材料費を含めた作業全体の金額であり、事前調査費用については含まれません。また、請負契約が交わされていない場合でも、業者に施工を依頼する際は適正な請負金額の相当額で判断されます。
ここからは、アスベスト事前調査の流れについてご紹介していきます。
まず始めに、書面による調査が行われます。
書面による調査の目的な以下の2点です。
調査の対象となった建築物等に使用されている建材にアスベストが含まれているか、把握漏れを防止する
2.目視による調査の効率性を高める
なお、書面による調査で対象となる書類は以下の通りです。
・設計図(確認申請書、確認済証)
・竣工図
・改修図
・対策工事記録
・過去の維持管理のための調査記録、改造補修時の記録
・過去の石綿含有に関する調査記録
書面調査の段階で、必要に応じて発注者や過去の経緯を知る施設管理者、工事者などの関係者にヒアリングし、情報を集めることもあります。
次に、現地において目視による調査が行われます。
目視調査は、書面検査と同様に必ず行われる調査です。書面では判断しにくい部分についても目視検査によって把握できる可能性があります。
目視調査では以下の作業が行われます。
・建築物の外観や屋上などの把握と確認
・内装や下地など内部の確認
・調査した内容についての現場メモの作成
現地での目視調査を通じて、調査対象となった建築物などに使用されている建材にアスベストが含まれているか判断します。
目視調査でアスベストの有無が判断できなかった場合、以下のいずれかの方法が取られます。
【分析調査】
石綿障害予防規則第3条第4項により、石綿が含まれているかどうかが不明な場合、原則として分析による調査を行います。試料を採取し、その結果を基に判断します。
【石綿含有みなし】
石綿が含まれているとみなす場合、分析調査を行わずに「みなし」として取り扱うことができます。この場合、石綿含有物質の除去などの対策が必要です。
どちらの方法を選択するかは、事業者や発注者が決定します。
事前調査によりアスベストの含有が確認された場合は、アスベストが周辺に飛散しないよう、飛散防止措置に則り、法令で定められた作業基準によって適切な施工が行われます。
また、断熱材などアスベストレベルが高い建材だと分かった場合、解体や改造、補修工事を行う際には工事発注者から都道府県に届けなくてはいけません。
ただし、この点については、通常のスレート屋根材や窯業系サイディングであれば不要です。届け出の必要性については、工事を依頼した専門業者に確認してください。
なお、施工業者が発行した報告書については、発注者が保管しておく必要がありますので、ご注意ください。
最後に、アスベストを含む屋根の解体・補修についての注意点をご紹介します。
人体に悪影響のあるアスベストですが、屋根材においては危険度が低いレベル3に分類されます。また、屋根材のアスベストは固形化されているため、通常は破損や劣化がなければ飛散しにくい特性があります。
ただし、破損が見られる場合はアスベストが飛散する可能性が高まりますので、早急に対処が必要となります。
アスベストの解体や処理には専門資格や技能が必要です。そのため、DIRでの除去は絶対に行わないようご注意ください。
屋根に含まれるアスベストについては、除去作業だけでなく塗装や洗浄についてもDIYは危険です。専門知識がないまま、DIYを行うことでアスベストを吸い込む危険が高まります。
自分でもできそうな作業だとしても、アスベストが含まれる屋根については必ず専門業者に依頼してください。
2004年以前に建築された建物の屋根材には、アスベストが含まれている可能性があり、アスベスト事前調査報告義務が生じます。
アスベスト事前調査報告は専門の資格を有す者でないと実施することができないため、必ず資格を有する専門業者に依頼してください。
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