屋根工事における石綿(アスベスト)事前調査について

屋根工事を行う際に、見逃してはならない重要なポイントの一つとしてアスベスト(石綿)の存在確認が挙げられます。石綿はその高い耐久性から、かつて多くの建築材料に使用されていました。そのため古い建物ではその存在が懸念されます。

屋根工事においても2022年4月から石綿の事前調査報告が義務づけられているため、避けて通ることはできません。
この記事では、屋根工事における事前調査について、具体的な手順や法的な要件を詳しくご紹介します。

屋根工事をスムーズに進めるためにも、ぜひ参考にしてください。

屋根工事におけるアスベストとは

アスベスト(石綿)は天然の繊維状の鉱物で、蛇紋石や角閃(せん)石などの鉱物が繊維状に変形したものを指します。
蚊紋石族・角閃石族に分類され、以下の6種類があります。

石綿の種類 特徴
白石綿(クリソタイル) 世界で使用された石綿の9割以上を占める種類。石綿製品の多くの原料として使用されていた。
青石綿(クロシドライト) 吹き付け石綿として主に石綿セメント高圧管に使用されていた。
茶石綿(アモサイト) 吹き付け石綿として主に断熱保温剤に使用されていた。
アンソフィライト石綿
トレモライト石綿
アクチノライト石綿
タルク(滑石)、蛭石などの不純物として含まれる種類。レモライトは吹付けの石綿として一部使用。

高い耐火性・断熱性に優れており、酸やアルカリにも強い耐性を持っているのが特徴です。さらに、加工しやすく丈夫といった特性もあるため、多くの工業製品や建築材に利用されていました。

アスベストの危険性

以下は、アスベストが原因で発症する可能性がある病気です。

発症する可能性がある病気 症状
石綿肺症(アスベスト症) 石綿を大量に吸入することで肺が線維化する肺線維症(じん肺)の一種。10年以上吸入した作業者に発症するとされている。潜伏期間は15年~20年。
肺がん 胚細胞に取り込まれた石綿の繊維による物理的な刺激で肺がんが発症するとされている。潜伏期間は15年~40年。
悪性中皮腫 胸膜、腹膜、心膜などの膜を覆う中皮細胞に発生する悪性の腫瘍。若い時期に石綿を吸い込んだ人が発症しやすいとされる。潜伏期間は20~50年。

このように、アスベストは人体への悪影響を及ぼすことが分かっており、現在は使用が禁止されています。
すでにアスベストが使われている建材については、飛散防止対策を行うなど細心の注意が求められています。

アスベストの危険度

アスベストには、その発じん性(粉じんの発生しやすさ)によって危険度がレベル1から3まで設定されています。

 

危険度 使用製品 飛散する可能性 処理方法
レベル1 吹き付け材 非常に高い 周囲を隔離する厳重な処理
レベル2 断熱材 高い 周辺を隔離する厳重な処理
レベル3 屋根材 粉砕や切断時は高い 隔離する必要はないが湿らせて処理

危険度はレベル1が最も危険で、レベル3が比較的低くなります。

屋根材についてはレベル3に分類されるため、比較的危険性は低くなります。しかし、屋根工事などで粉砕や切断が行われる際には、適切な方法で処理する必要があります。

また、屋根工事だけでなく、劣化や損傷などにより表面が削れたり割れたりすると、飛散する可能性が高くなります。アスベスト含有屋根材を使用している場合は、屋根の不具合が見られたら速やかに専門業者に相談することをおすすめします。

アスベストを含有する屋根の見分け方

石綿調査

アスベストが健康に悪影響を及ぼすことは広く知られていますが、実際に自分が住んでいる家に使用されているかどうかは分からないという方は多いでしょう。
そこで今回は、屋根材にアスベストが含有されているかどうか、見分ける方法をご紹介します。

建設時期

2006年以前に製造された屋根材には、アスベスト(石綿)が含まれている可能性があります。
アスベストに関する制限は段階的に施行されてきました。

2004年:代替が難しいものを除き、すべての石綿製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用が禁止。
これにより、アスベスト含有屋根材は製造されなくなりました。
2006年:2006年には石綿を重量の0.1%を超えて含有するものの製造、輸入、譲渡、提供、使用が全面禁止されました。

出典:アスベスト対策Q&A – 国土交通省

このため、2004年以降に製造された屋根材はアスベストを含む可能性が低いといえます。ただし、2004年以前に建築された建物でも、必ずしもアスベストが含まれているとは限りません。あくまで目安としてお考えください。

建材の種類

2004年以前に建築された建物でも、すべての屋根材にアスベストが使用されているわけではありません。
代表的なアスベスト含有屋根材には、以下のような種類があります。

・住宅用屋根用スレート(平板・波板)や工場に使用される波型スレート
・スレート瓦
・セメント瓦

一方、粘土瓦や金属屋根にはアスベストは含まれていません。ただし、アスベストが使用されていないと思われる屋根でも、事前調査報告は必要ですのでご注意ください。

また、屋根修理と同時に外壁工事を行われるケースが多いですが、外壁においても注意が必要です。
以下の建材はアスベストを含有している可能性があります。

・窯業系サイディング
・軒天などのケイカルボードフレキシブルボード
・天井などの化粧石膏ボード

改修工事を行う際には、屋根と併せて調査が必要になると考えて良いでしょう。

石綿事前調査報告義務について

アスベストは、2006年9月の法改正によって製造・使用などが全面的に禁止されました。しかし規制以前に建築された建物は、石綿が使用されている可能性が高くなります。

そのため、2022年4月より改修工事や解体工事などを行う業者には、「石綿事前調査報告」が義務付けられました。石綿の含有の調査を行いその結果を都道府県、指定都市、中核市、大気汚染防止法に定める政令市や労働基準監督署に報告しなくてはいけません。
この調査や報告は工事施工者が行います。

この調査によって石綿の有無を明確にし、工事中のアスベストの飛散を適切に防ぎ、人体への影響を最小限に抑える対策が講じられることになります。

4月1日から石綿の事前調査結果の報告制度がスタートします | 環境省

石綿事前調査報告が必要な工事の種類

アスベストを含んでいる可能性のある建物を改修・解体する場合に必要となる事前調査報告ですが、すべての工事が対象になるわけではありません。石綿の有無に関わらず、以下の工事の場合は事前調査報告が必要となります。

当該作業の対象となる床面積の合計が80㎡以上となる解体工事

解体部分の延べ床面積が80㎡以上の広さがある住宅や建築物の解体工事です。
この条件に該当する場合は、事前調査報告義務が生じます。

当該作業の請負代金の合計額が100万円以上の建築物の改修工事

住宅などの建築物を改造および改修するにあたり、請負金額が税込で100万円以上かかる改修工事には、事前調査報告義務が生じます。

請負金額の内訳は、材料費を含めた作業全体の金額であり、事前調査費用については含まれません。また、請負契約が交わされていない場合でも、業者に施工を依頼する際は適正な請負金額の相当額で判断されます。

当該作業の請負代金の合計金が100万円以上の工作物の解体・改修工事

ボイラー、煙突、焼却設備などある特定の工作物の解体工事や改修工事を行うにあたり、請負金額が100万円以上かかる場合に、事前調査報告義務が生じます。

こちらも建築物の改修工事同様、請負金額の内訳は、材料費を含めた作業全体の金額であり、事前調査費用については含まれません。また、請負契約が交わされていない場合でも、業者に施工を依頼する際は適正な請負金額の相当額で判断されます。

石綿事前調査報告は誰が行う?

これまでは無資格でも一定規模以上の工事を行う際には業者が行っていた事前調査報告ですが、2023年10月以降は厚生労働大臣の定める「建築物石綿含有建材調査者」という資格を持つ者が行わなくてはならなくなりました。

「建築物石綿含有建材調査者は」、以下の3つのうちいずれかの資格を有している者か、「日本アスベスト調査診断協会」に登録されている者です。

・一般建築石綿含有建材調査者(一般調査者)
・特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)
・一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者)

そのため、事前調査を行う必要がある建物の改修工事や解体工事を行う際には、必ずこれらの資格を有する業者に依頼する必要があります。

ただし、事前調査報告義務は工事を請け負う業者側の責任です。発注者側が特別に何かする必要はありませんので、その点は安心してください。

解体・改修工事を行う側の注意点

石綿は、平成18年(2006年)9月から輸入、製造、使用などが禁止されていますが、それ以前に着工した建築物等には石綿が使用されている可能性があります。
このため、解体・改修工事を発注する場合、建物のオーナー等の発注者は、施工業者に対して次のような配慮を行うことが義務となります。

施工業者への配慮義務

・解体・改修工事を行う建築物等の石綿の使用状況等(設計図書など)を施工業者に伝える必要があります。

・解体・改修工事を行う建築物等に石綿が使われていることが判明した場合、石綿除去の工事に必要な費用、工期や作業方法などについて施工業者が法令を遵守し工事をこなえるよう配慮する必要があります。

※ 建築物等の解体・改修を行う事業者には、法令により、石綿の含有の有無の事前調査を行う義務があります。このため、解体・改修工事を事業者に発注する場合には、石綿の事前調査費用が計上されていることを確認してください。

アスベスト事前調査の流れ

ここからは、事前調査がどんな流れで行われるのかについてご紹介していきます。

①書面調査

まず始めに、書面による調査が行われます。
書面による調査の目的は以下の2点です。

1.調査の対象となった建築物等の建材がアスベストを含有しているか、把握漏れを防止する
2.目視による調査の効率性を高める

なお、書面による調査で対象となる書類は以下の通りです。

・設計図(確認申請書、確認済証)
・竣工図
・改修図
・対策工事記録
・過去の維持管理のための調査記録、改造補修時の記録
・過去の石綿含有に関する調査記録

書面調査の段階で、必要に応じて発注者や過去の経緯を知る施設管理者、工事者などの関係者にヒアリングし、情報を集めることもあります。

②目視調査

次に、現地において目視による調査が行われます。
目視調査は、書面検査と同様に必ず行われる調査です。書面では判断しにくい部分についても目視検査によって把握できる可能性があります。

目視調査では以下の作業が行われます。

・建築物の外観や屋上などの把握と確認
・内装や下地など内部の確認
・調査した内容についての現場メモの作成

現地での目視調査を通じて、調査対象となった建築物などに使用されている建材にアスベスト含有されているか判断します。

③分析調査・石綿含有みなし

目視調査でアスベストの有無が判断できなかった場合、以下のいずれかの方法が取られます。

【分析調査】
石綿障害予防規則第3条第4項により、石綿が含まれているかどうかが不明な場合、原則として分析による調査を行います。試料を採取し、その結果を基に判断します。

【石綿含有みなし】
石綿が含まれているとみなす場合、分析調査を行わずに「みなし」として取り扱うことができます。この場合、石綿含有物質の除去などの対策が必要です。

どちらの方法を選択するかは、事業者や発注者が決定します。

事前調査でアスベスト含有が確認された場合

事前調査によって石綿の含有が確認された場合は、周辺に飛散しないよう、飛散防止措置に則り、法令で定められた作業基準によって適切な施工が行われます。

また、断熱材などアスベストレベルが高い建材だと分かった場合、解体や改造、補修工事を行う際には工事発注者から都道府県に届けなくてはいけません。

ただし、この点については、通常のスレート屋根材や窯業系サイディングであれば不要です。届け出の必要性の有無については、工事を依頼した専門業者に確認してください。

なお、施工業者が発行した報告書については、発注者が保管しておく必要がありますので、ご注意ください。

アスベストを含む屋根の解体・補修についての注意点

最後に、アスベストを含む屋根の解体・補修についての注意点をご紹介します。

破損しなければ害は少ない

人体に悪影響のあるアスベストですが、屋根材においては危険度が低いレベル3に分類されます。また、屋根材のアスベストは固形化されているため、通常は破損や劣化がなければ飛散しにくい特性があります。

ただし、破損が見られる場合は飛散する可能性が高まりますので、早急に対処が必要となります。

必ず専門業者に依頼する

アスベストの解体や処理には専門資格や技能が必要です。そのため、DIYでの除去は絶対に行わないようご注意ください。

屋根に含まれるアスベストについては、除去作業だけでなく塗装や洗浄についてもDIYは危険です。専門知識がないまま、DIYを行うことでアスベストを吸い込む危険が高まります。

自分でもできそうな作業だとしても、アスベストを含む屋根については必ず専門業者に依頼してください。

適切な施工業者を選ぶために

屋根材に赤面が含まれているか適切に調査をし、工事をおこなう業者を選ぶために、以下のようなポイントに注意して施工業者を選びましょう。

・仮見積もりの段階で石綿の調査費用がしっかり含まれていること、石綿の調査をおこなうための資格(建築物石綿含有建材調査者など)を持っているか確認する。

・本見積もり(石綿調査結果後)に、石綿事前調査報告書の提出を要する石綿含有吹付材(レベル1)、保温材等(レベル2)がある場合、労働基準監督署に提出した計画届、自治体に提出した特定粉じん排出作業届の写しをもらっておく。

・工事後、石綿の飛散防止措置がしっかりおこなわれたことを証明する作業実施状況の写真などの記録をもらっておく。

石綿が含まれるスレート屋根の工事は信頼できる地域密着の施工業者に

解体時に石綿が飛散する可能性があるため、石綿スレート屋根の改修にあたっては法律でも様々な定めがあります。「石綿作業主任者」など必要な資格をもって工事ができる専門業者へ依頼を行いましょう。

石綿スレート屋根の改修費用を抑えるには

また、石綿が含まれる屋根の工事は他の屋根材の工事に比べ、調査や廃棄といった工程が加わることから費用がかかってしまいます。
工事費用を抑えるためには、地域密着の施工業者に依頼をすると良いでしょう。
大手ハウスメーカーなどの場合、下請け業者に工事を依頼しているため中間マージンが発生し、同じ内容の工事でも費用が割高になってしまうのです。

一方で、自社施工の業者ですと中間マージンが不要なため、その分工事費用も安くなるというわけです。また、工事にあたる職人との直接のやり取りが可能なので、不明点や相談事などがあれば気軽に伺えるというメリットもあります。
ただし、地域密着の業者でも突然訪れる訪問業者には注意をしましょう。悪質な工事で多額の費用を請求する工事トラブルも多く報告されています。

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まとめ

2004年以前に建築された建物の屋根材はアスベストを含む建材を使用している可能性があり、事前調査報告義務が生じます。

事前調査報告は専門の資格を有す者でないと実施することができないため、必ず資格を有する専門業者に依頼してください。

屋根修理の匠は、全国の優良屋根修理業者を紹介しています。
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