屋根修理の失敗談をご紹介します!〈木造編〉

屋根修理の失敗談

このページでは、お客様が当サイト、屋根修理の匠にお問い合わせ頂く前に、実際にあった屋根修理のトラブル事例について紹介します。

またこのページは主に木造の建物について解説しています。(鉄骨造(S造)・鉄骨コンクリート造(RC造)編はこちら)

今後の屋根修理業者選定の参考にしてください。

屋根修理の失敗談① スレート瓦屋根を塗り替えたら雨漏りが起きてしまった。

住宅用のスレート屋根(=スレート瓦)は、新築時はメーカーで表面に塗装を施した状態で出荷されます。新築から10年程度経過すると表面の塗装が劣化し、スレート瓦本体に雨水が染み込むようになり、表面にコケが生えてくるなど、素材の劣化や凍害などによる割れが発生するようになります。スレート瓦を少しでも長持ちさせるために、定期的なメンテナンスとして塗り替え工事が有効です。塗り替えによって建物の劣化や雨漏りを防ぐことはできませんが、スレート瓦そのものを保護し長持ちさせる効果はあります。今回ご紹介する事例は、スレート瓦を長持ちさせるために実施した屋根の塗り替えメンテナンスで起きてしまった失敗事例です。

築21年、2階建て木造住宅、屋根はコロニアル、外壁はモルタル吹き付け塗装仕上げです。新築から15年程度経った頃、建てた工務店さんに依頼して外壁と屋根の塗り替えを実施しました。塗り替えから半年ほどした大雨の日に、二階の天井から雨漏りが発生しました。あらためて工務店さんに連絡して屋根を見てもらいましたが、特に不具合はないとのこと。とりあえず様子を見ることになりましたが、しばらく経った大雨の日、再び2階の天井から雨漏りがしました。あらためて工務店に連絡し、今後は屋根の塗り替えを担当した塗装職人さんにも一緒に見てもらいました。しかし、やはり屋根に目立った不具合はないとのこと。雨漏りの量がそれほど多くなかったこともあり、もう少し様子を見ることになりました。

しかし、またしても次の大雨の日に雨漏りが発生。さすがに、これは屋根に何かしらの不具合があるのではないか、もしかしたら屋根の塗り替えに原因があるのではないか、と工務店さんに強く抗議をしたのです。それに対する工務店さんの見解は、「スレート屋根を塗り替えしたばかりなのに雨漏りが起きるということは、もはや屋根そのものが寿命なので、葺き替えをしなければ雨漏りは止まらない」とのことでした。

屋根の寿命を伸ばすと説明されて塗り替えをしたのに、逆に大雨のたびに雨漏りが起きるようになってしまったのです。大きく落胆するとともに、どうしても納得することができず、屋根修理の匠に相談してこられたのです。塗り替え工事から既に6年が経過していました。

相談を受け、早速お伺いして屋根の状態を確認すると、すぐに雨漏りの原因と思われる部分に気が付きました。スレート瓦の重なり部分が、塗り替えの際の塗料で詰まってしまっていたのです。

スレート屋根の重なり部分の塗料つまり

工務店さんの説明では、屋根には不具合はなかったとのことですが、スレート瓦の重なり部分が塗料で詰まってしまっていることの状態は、まさに不具合そのものと言えます。本来、このスレート瓦の重なり部分には適切な隙間が確保されていなければいけません。台風や大雨の際にスレート瓦の裏側に雨水が浸入する場合がありますが、スレート瓦の裏側に雨水が浸入したとしても、スレート瓦の下にはアスファルトルーフィングなどの防水シートが張ってあるため雨漏りすることはありません。しかし、この事例のようにスレート瓦の重なり部分を塗料で塞いでしまうと、スレート瓦の裏側に侵入した雨水が逃げ場を失ってしまうのです。逃げ場を失った雨水は、スレート瓦を留めている釘の貫通部などを伝って屋根裏にまわりこみ、雨漏りを起こしてしまうのです。したがって、スレート瓦屋根を塗り替える際は、塗装が乾いたあと、皮スキと呼ばれる金ペラ状の道具やカッターナイフなどを使って、重なり部分に詰まった塗料を切る「縁切り」と言われる作業が重要になります。この「縁切り」作業が不十分な場合、しばしば雨漏りが起きることは、外壁のメンテナンス業界ではもはや常識と言えますが、残念ながらそれを知らない工務店や塗装業者がいまだに存在するのが現実です。昨今では、スレート瓦塗り替えの際の縁切り不足を補い、スレート瓦の裏側にまわった雨水をスムーズに排出するために開発された縁切り専用部材も広く使われています。

縁切り専用部材を挿入

結論から言えば、今回の雨漏りはスレート瓦屋根を塗り替えた際に「縁切り」作業をしなかったために起きたわけです。スレート瓦を保護し、その寿命を伸ばすために実施したメンテナンス工事が、逆に雨漏りを発生させていたという残念な結果を招いてしまったのです。塗り替え工事を請け負った工務店さんと塗装職人さんが、そろって正しい知識を持っていないことが最大の問題であり、プロとして大変恥ずかしいことだと思います。しかし、実際にこういう業者さんがいるのが現実なのです。自分の身を守るためにも、この事例のようにメンテナンスをしたことが、逆に建物に害をもたらすケースがあることを知っておきましょう。

解決策:スレート屋根を塗装したら縁切りすること。

 

 

屋根修理の失敗談② 飛び込みセールスの言うままに瓦屋根の補強をしたら家中が雨漏り

木造住宅における代表的な屋根材に和瓦があります。近年の建物においては、スレート瓦(コロニアルやカラーベスト)や金属系の屋根材が多く、採用されていますが、和瓦の屋根には、木造住宅に欠かせない通気性という優れた特性があります。また、昨今、地震などで瓦が崩れている映像を多く見ますが、瓦自体は基本的に釘などで固定していません。そのため、地震で建物が大きく揺られると動いてしまうわけですが、逆に言えば固定していないからこそ、傷んだ部分、割れた部分だけを一枚単位で交換することができます。これはスレート屋根や金属屋根にはない優れた面です。

さらに和瓦は無機系の材料ですので、たいへん「もち」が良い(耐候性が高い)です。基本的に塗り替えは不要ですので、メンテナンスといえば棟の漆喰を補強したり、あるいは棟をばらばらにして組みなおす「取り直し」が必要なくらいです。比較的ランニングコストがかからない屋根材と言えます。

和瓦は波型の形が重なり合っていますが、この波型の形と重なり部分から瓦の裏側にまわった雨水を排出しています。ですので瓦同士に隙間があるのが当然です。大雨や台風などの際に、個の隙間から瓦の裏に雨水が入り込みますが、瓦の下に張ってあるアスファルトルーフィングという防水シートが雨漏りを防いでいます。この仕組みはスレート瓦屋根と同じです。

この和瓦の建物を狙って営業するセールスマンが存在します。和瓦の少しのズレなどを強調して「このままだと雨漏りします」とか「いずれ瓦がずれて落ちます」などと言ったセールストークでお客様の不安をあおります。言葉巧みに「点検しましょう」と言い、梯子を使って屋根に登ると、お客様の目の届かないところで、自分で瓦をずらしたり割ったりして、その写真を撮ってお客様に見せるのです。実際に瓦がズレたり割れている写真を見せられて動揺しているお客様に畳みかけます。

「瓦の隙間を埋めて補強すれば、瓦のズレや割れを防ぎ、雨漏りの予防にもなりますよ」

自分では屋根に登って確認することができないため、そのまま悪徳セールスマンの言いなりで補強工事をすることになりました。

その補強工事も無事に終わり、しばらくは何もなく過ごされていました。ところが、補強工事をしたことすらすっかり忘れた頃にやってきた台風で雨漏りが発生したのです。今まで全く雨漏りしたことがなかったので、屋根の補強工事に何かしら問題があったのではないかと考え、施工業者に連絡しました。「担当者がいないのであとで折り返します」という返事です。

しかし、待てど暮らせど連絡はありません。幸い台風による大雨は短時間でやみ、雨漏りは止まりましたが、施工業者からは全く連絡がありません。その後も数回に渡って連絡しましたが「忙しい」とか「担当がいない」など、一向に対応してくれる気配はありませんでした。そんな八方塞がりの状況で屋根修理の匠にご相談頂きました。

早速屋根に登って確認してみると、瓦の隙間、棟の隙間など、ありとあらゆる隙間にシーリング材が充填されていました。補強工事とは瓦の隙間にシーリング材を充填する工事のことだったのです。これでは雨漏りが起きるのも当然です。せっかくの和瓦の特性である通気性もなくなってしまいます。補強工事と称して、あらゆる隙間にシーリング材充填してありますが、広い屋根において全ての隙間を完璧にシーリング材で充填することは簡単ではありません。シーリング材だけで完全に雨水の侵入を防ぐことは難しいのです。見逃した小さな隙間から雨水が浸入してしまいます。また、仮にすべての隙間を完璧に埋めることができたとしても、シーリング材はいずれ劣化して剥離します。そうなればその部分から雨水が浸入することになります。つまり、遅かれ早かれ瓦の裏側に雨水が浸入するのは確実なのです。通常の弱い雨であれば大丈夫でも、台風などの強風と強い雨では、ちょっとした小さな隙間やシーリング材が剥離した部分から雨水が浸入してしまいます。その侵入した雨水の抜け道が補強のためのシーリング材で塞がっているため、逃げ場をなくした雨水によって雨漏りが起きてしまったのです。

建物には塞ぐべき隙間と、塞いではいけない隙間があります。むやみに隙間を埋めることは雨漏りに繋がるリスクがあるのです。また今回の事例のように、見ず知らずの営業マンを簡単に屋根に登らせてはいけません。屋根に登る許可を与えるのは信頼できる業者だけにしましょう。また、無料の屋根点検や床下点検などを利用してお客様を騙そうとする悪徳業者も少なくありません。彼らは自分で瓦をずらしたり割ったりします。床下点検で撮ってきた写真をお客様に見せますが、それは他の建物で撮ってきたシロアリの写真という手口もあるようです。「近所で工事をしています」などと言って声をかけてくるケースが多いようなので注意してください。

解決策:瓦の隙間を塞いだら雨水の逃げ道がなくなるので要注意。

 

屋根修理の失敗談③ カバー工法で屋根を噴いたら大雨の度に雨漏りするようになった

屋根のカバー工法とは、既存の屋根材(スレート瓦や金属系屋根材など)を撤去せず、その上に新しい屋根材を被せて葺く改修工法のことです。重ね葺きとも言います。新しい屋根材は薄くて軽いことが求められますので、多くは金属系屋根材が使われます。(アスファルトシングル材が使われる場合もあります)。

ガルバリウム(アルミ・亜鉛の合金メッキ)鋼板が主流となって防錆性能がアップし、表面コーディング技術も進歩したことから、耐久性も高くなっています。

それに伴い、屋根のリフォームにおいて金属系屋根材を用いることが多くなってきました、その中でもカバー工法は、金属屋根材を残すので撤去費用と処分費用を抑えることができます。

また古いスレート屋根材の中には発がん性のあるアスベストが含有されている可能性があり、撤去の際の飛散リスクがあること、処分が難しいことなどから、屋根の改修工事においてはカバー工法が主流となりつつあります。

そんな中、今まで雨漏りしていなかったにも関わらず、カバー工法で屋根を葺いたら雨漏りするようになったケースは少なくありません。

その原因としてよく言われているのが施工した職人の知識・技量不足と、工法選定のミスです。しかしカバー工法の問題点は、そういった施工面だけでとどまるものではありません。そもそもの工法として、構造的に雨漏りを誘発してしまう可能性があるのです。

ここで屋根の基本的な仕組みについて触れておきます。木造建物の屋根は、屋根仕上材だけによる完全防水ではありません。基本的には①屋根仕上げ材で雨を侵入させない仕組みを施し、②万一雨水が仕上材の下に侵入した際には、速やかに外部へ排出できる仕組みが施されています、この二段階が1セットとなって雨漏りを防いでいるのです。

屋根の仕組み

瓦や板金などの屋根仕上材が「一次防水」で、下葺き材のアスファルトルーフィング等が「二次防水」という考え方です。二次防水のアスファルトルーフィングの上を雨水が流れる可能性がありますが、それは正常なのです、要するに二次防水が機能しているかどうかが雨漏りに深く関わってくるのです。

カバー工法が構造的に雨漏りを誘発する可能性として、下地の腐朽を確認することができない工法であるという点があります。カバー工法の一般的な施工手順は、既存のスレート瓦材などの上に粘着層付きのアスファルトルーフィングを取り付け、その上に金属系屋根材を葺きます。金属系屋根材は釘やビスで固定しますが、既存屋根仕上材の下地である板(野路板)に対して打ち込みます。もし野路板が腐朽していれば、釘やビスが聞かないため、留め付け強度が低下します。その結果、新規に被せた屋根材が働き、アスファルトルーフィングシートが切れてしまうなどの事故が起きる場合があるのです。野路板が腐朽しているかどうかは、」瓦材を剥がしてみないとわかりません。既存の屋根は、野路板・アスファルトルーフィング、スレート瓦が隙間なく密着しているため、10年経過すれば、程度の差こそあれ、野路板に何らかの腐朽が発生します。従って、カバー工法は不確定要素が大きい施工方法なのです。

さらに、屋根カバー工法には最大の欠点があります。この欠点は、下屋根(母屋から差し出して作られた屋根)や庇など、屋根の上に外壁が乗っかっているような部位でのみ起こります。

下屋根の雨おさえ板金

上の写真は下屋根の雨おさえ板金です。サイディングボード張り仕上げの外壁では、下屋根の雨押さえ板金の上部に隙間があります。この隙間はサイディングボードと構造合板との間の通気層であり、雨水がサイディングを越えて侵入した際の出口でもあります。

カバー工法施工後

上部の写真はカバー工法による工事完了後の写真です。工事によって新規の雨押さえが取り付けられています。工事前は、サイディングの裏に回った雨水が、雨押さえとサイディングの隙間から排出され、屋根材の上を流れて軒樋へと適切に処理されていました。しかし、工事後の納まりでは、サイディングの裏側に入り込んだ雨水が、新規に張られたアスファルトルーフィングと新規に葺かれた屋根材との間に入り込むことになります。

新規アスファルトルーフィングがあるので、ダイレクトに雨漏りすることはありませんが、雨水が軒樋に到達するまでのスピードが圧倒的に遅くなってしまいます。万一排出が追いつかなくなってしまってしまうほどの雨水がサイディングの裏側に侵入した場合は、水切り板金の裏側立ち上がりを越えて雨水が室内に溢れ出してしまう可能性があります。

しかし、上の写真ようなカバー工法による納まりは、決して間違ってはいないのです。実際に、屋根材メーカーの施工仕様書でも、写真のような納まりで施工する酔に指示されています。施工者の知識不足・技量不足ではないのです。これが、この工法の構造的な問題なのです。

解決策:大切なのは外壁との取り合い部処置とアスファルトルーフィングなどの二次防水。

 

屋根修理の失敗談④ 窓の隙間をシーリングで塞いだら雨漏りが悪化してしまった

窓の上枠から雨漏りしている事例は、たいへん多いです。冊子と木枠の間や、冊子を留めているビス穴から雨水が浸出してくるパターンなどです。このタイプの雨漏りが起こったときに、まず疑ってしまうのが外側のサッシ枠の上面です。そこに隙間があったらシーリングで埋めてしまいたくなるのが人間の心理でしょう。しかし、サッシ枠の上面を塞いでしまうと、かえって雨漏りが悪化してしまうこともあるのです。

今回の事例で紹介する建物は、外壁がモルタル下地、磁器タイル張り仕上げの木造住宅です。いわゆる湿式工法で通気層はありません。建築した業者が、雨漏りを止めるために写真の一にシーリングを施したところ、さらに雨漏りがひどくなっていました。

窓枠上部にシーリングが打たれている

この雨漏りのメカニズムは下記の図解の通りです。

窓上のシーリング材で雨漏りを誘発

磁器タイル自体は水を通しませんが、目地モルタルは水を吸います。雨が降ると目地モルタルから浸透した雨水がタイル裏の下地モルタルへ到達します。下地モルタルまで到達した雨水は、二次防水であるアスファルトシングルの表面を伝い、窓枠の上まで流下します。本来であれば冊子上部まで到達した雨水は、冊子上の目地モルタルから外部へと排出されます。つまり、冊子上部が雨水の排出口となっているのです。しかし今回の事例では、その冊子上部にシーリング材を充填してしまったため、雨水が逃げ場を失い、結果的に雨漏りを起こしてしまったのです。

この事例においても、塞いではいけない隙間を塞いだことが雨漏りの原因です。雨漏りを止めようと良かれと思ってやった工事が、かえって雨漏りを悪化させたという事例です。屋根の「縁切り」不足の事例でも、カバー工法による事例、瓦をシーリングを補強した事例でも、すべての事例において共通することが、雨水の出口を塞いでしまったことによる雨漏りです。木造住宅においては、雨を防ぐ(=防水)という考え方よりも、雨をコントロールする(雨仕舞い)という考え方が大切なのです。まずは雨水が侵入しないようにコントロールする。万が一雨水が侵入した場合は速やかに排出するようにコントロールする。この雨仕舞いの考え方が大切なのです。

解決策:出口を塞いだら雨は逃げ場を失う。

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