屋根(建築)リフォーム業界の裏事情!職人の腕は落ちている?

昨今の建築業界における最大の問題は職人不足です。一般社会の高齢化よりはるかに早いスピードで職人さんの高齢化が進んでいます。職人になりたいという若い世代が激変していることが原因です。若い世代が激変しているという理由は単純明快で、職人という仕事に若い世代が魅力を感じないから…。一昔前のように「仕事はきついけど他の仕事より稼げる」とか「手に職をつけて将来は独立する」といった職人のメリットや夢がなくなりつつあるのです。

そもそも人手不足は建築業界の問題だけではありません。製造業にしろ、サービス業にしろ、他の業界においても人手不足は最大の問題です。つまり、若い人材は引く手あまたの状態。報酬や待遇面を含め、企業間あるいは業界間において、人材の争奪戦が始まっています。あらゆる業界・業種が人材不足という売り手市場の状況において、「職人」の仕事と他の仕事を相対的に比較した時、若者が夢や希望を見出しにくくなっている現状があるのです。屋根工事を含む建築業界においては今後もますます人手不足、職人不足が深刻化していくでしょう。

そんな屋根・建築業界における「職人」の世界の話ですが、高齢化や人手不足の他にも大きな問題を抱えています。それは「職人」のレベルの低下です。わかりやすく言えば「昔と比べて職人の腕が落ちている」のです。職人の腕が落ちている原因は大きく分けて二つあります。

①技術の進化

②技術の断絶

技術の進化

一つ目の「技術の進化」についてご説明しましょう。「技術の進化によって職人の腕が落ちている」とは、いったいどういう意味なのでしょうか。

技術はあらゆる分野で進化し続けています。インターネットやスマホに代表されるIT関連、自動車産業やロボット産業、あらゆる業界において技術は日進月歩で進化しています。建築(屋根)に関する技術も日々進化し続けており、数十年前の技術と今の技術を比べると隔世の感があります。

例えば道具の進化があります。昭和の時代に手でやっていた作業が今ではほとんど機械に変わっています。大工さんののこぎりは電動ですし、釘打ちもエアコンプレッサーによる釘打ち機に変わっています。道具が進化することで作業スピードが上がり、効率化工事短縮に繋がっています。

建材(屋根材)も進化しています。例えば板金工事の部材です。昔は板金の職人さんが、一枚の金属板から自分のはさみで切りだし、自分の手で追って加工していました。一つ一つの部材を現場で手作りしていたのです。今では板金工事で使用する部材のほとんどが工場のプレス機で折られて作られています。極端な話、現場では取り付けるだけです。板金工事に限らず、昔は大工さんが手刻みで加工していた木材も、今はほとんど工場でプレカットされており、現場では組み立てるだけとなっています。また、高層ビル建築など最新の建築技術も日々進化し続けており、一昔前では考えられないようなデザインの建物が、考えられないようなスピードで建築され続けています。

屋根材においても、昨今ではSGL鋼板など、瓦屋根に近い耐久性を持ちながらも重量は軽く、フッ素などにより塗装された強い耐候性を持ちます。

このように建築における様々な技術が進化したことで、現場での作業は徹底的に効率化され、それに伴ってスピード化が進み、圧倒的な工事短縮や低コスト化を実現しています。

本来このような「技術の進歩」は望ましいことです。しかし、その半面「職人さんの腕が落ちる」ことにもつながってしまう場合があるのです。

大工さんにして板金屋さんにしても現場で刻んだり作ったりする必要がなくなったのです。必要ない技術、使う場がない技術をわざわざ習得する人はいません。(稀に探究心があり勉強熱心な職人さんもおられますが)。結果的に、「技術の進歩」によって昔の職人さん持っている技術が失われてしまったのです。

ここで大きな問題があります。それは職人さんの失われた技術は、完全に必要なくなったわけではないからです。

確かに現場で部材を加工する機会はほとんどなくなりました。しかし、建築や屋根リフォームの現場においては、工場で作られた部材が適合しないことも珍しくありません。そのような時、臨機応変な対応が必要になります。部材を新たに手を加えて加工したり、あるいは新たに部材を作ったり、その場でその問題を解決するために基本的な技術やノウハウが必要なケースは少ないくないのです。そのようなことを考えると、最近の職人さんは腕が落ちていると言わざるを得ないのです。もっと積極的に昔ながらの建築技術に興味を持ち、昔の職人さんたちの技術やノウハウを学んでほしいと思います。

技術の断絶

ここまで「技術の進化」が「職人さんの腕が落ちる」ことに繋がっている話を書きました。ここからは「技術の断絶」によって「職人さんの腕が落ちた」話です。

昭和の時代は高度経済成長を経て、いわゆるビル、住宅、マンションと、雨後の筍のように建物が建ち続ける、いわゆる建設ラッシュが続きました。建設ラッシュと連動して職人さんの数も増え続けました。見習い職人として親方に弟子入りをし、10年程度しっかり修行したら次は自分が独立して親方になり弟子をとります。さらにその弟子もいずれ親方として独立します。

その好循環の中、建設ラッシュとともに、まるで富士の裾野が広がるように職人さんも増え続けていきました。振り返ってみると、この頃が建設業界にとって最も良い時代だったかもしれません。そんな建設ラッシュのピークがやってきます。1980年のいわゆるバブル期です。このバブル期の建設業界は尋常ではありませんでした。今冷静に振り返ると、当時の建設建築業界は完全にキャパシティを超えてしまっていたと断言できます。建設建築業界全体の施工能力を、受注量が完全にオーバーしていたのです。

建設建築業界の成長とともに順調に裾野を広げてきた職人の世界は、この異常なバブルの波に飲み込まれてしまい、それまで培ってきた好循環のサイクルが完全に破綻してしまいました。大手ゼネコンの現場では、数日前に学校を卒業したばかりの若い職人が、さらに若い職人から先輩と呼ばれ、その後輩に対して指示を出していました。本来であれば見習い職人として補助的な作業くらいしかできない新人レベルの人間が、自分よりもさらに経験が浅い職人を指導しているのです。決して誇張した話ではありません。

こんな話が珍しくないぐらい当時の建設建築業界は混乱しており、現場の人手不足は深刻でした。ゼネコンや工務店の間で当然のように職人の争奪戦が始まりました。その結果、職人の常用人工(日当)が2万円→3万円→4万円と、みるみるうちに上がっていきました。バブルの最盛期には日当5万円はざらで、工期に追われて切羽詰まった現場ともなると、日当8万円とか10万円とか考えられない大金が飛び交いました。それでも職人が集まらないのです。完全に異常な世界ですが、工事を進めたい現場監督は必死です。もし職人争奪戦に敗れれば、現場は完全に止まってしまいます。追い詰められた現場監督たちは、苦肉の策として、いや「禁じ手」とも言うべき手段で事態の打開を図るようになります。他のゼネコン系列の下請け職人の中から、中堅クラスの職人に甘言を話して独立を促すのです。どういうことかというと、まだまだ親方から教わるべき技術やノウハウがたくさんある中堅クラスの職人を、甘い言葉でけしかけて独立させ、親方にしてしまうのです。もともとほとんどの職人が「いずれ自分も親方として独立したい」と思っていますから、まさに渡りに船です。

本来であれば10年から15年の修行をし、親方の持っている技術やノウハウを一通り学んでから独立するのが理想的な流れです。独立後も最初のうちは師匠から仕事を回してもらう必要もありました。建設建築業界における元請け下請けの関係は全て信用の上に成り立っていたのです。親方を裏切るような形で中途半端に独立しても信用を失いどこからも仕事は回ってきません。しっかりとした技術とノウハウを身に着け、さらに長年働いて積み重ねた信頼関係があって初めて独立できたのです。

しかし、バブルがそれらの仕組みを全て破壊しました。本来であれば独立するには技術も経験も全然足りない中堅クラスの職人が、現場監督の甘い誘いに乗ってどんどん独立していきました。いつかは一国一城の主になりたい、一日でも早く独立したいという強い願いを持ちながら、親方の下で修行を続けていた彼らにしてみれば、いますぐに「修行の身」から「夢だった親方」になれるのです。断る理由はありません。独立すればどれだけ儲かるか、自分の親方を見ていれば嫌というほどわかりますから、独立しない方が不思議でしょう。こうしてバブルが弾けるまで職人の取り合いは続きました。そのうちに中堅クラスどころか、職人になって2~3年という見習い職人に毛が生えた程度の若手にまで独立の誘いがかかるようになります。このお祭り騒ぎのような独立競争は、やがてバブル崩壊とともに落ち着いていくことになります。この時期、とても多くの「中途半端な親方」が誕生してしまいました。独立する前に身につけておくべき知識や技術を持たないまま独立してしまった経験値の浅い親方が、次の世代の職人を育てることになってしまったのです。

このようにして建設建築業界に「技術の断絶」が起きてしまいました。正確には「技術の継承が断絶した」と言った方が良いのかもしれません。前の世代から次の世代へと受け継いでいくべき技術や知識、経験とノウハウが、バブル期を境に完全に断たれてしまったのです。基本的な知識や根本的な技術を身につけていない親方の元で修行した職人たちが今の建設建築業界の中心になりつつあります。親方が持っていない技術や知識を、その弟子が身につけられる可能性はありません。「技術の断絶によって職人さんの腕が落ちた」という話には、このような特殊な事情と経緯があったのです。

屋根修理の匠では、このような屋根・建設建築業界の背景から、屋根職人さんに掲載頂く際には一定の審査基準を設けております。

そのため一定の技術、知識、ノウハウ、経験をお持ちの方ばかりですので安心してご利用ください。

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